予防医学が腰痛も救う?~『LIFE SPAN~老いなき世界』を読んで

読書ネタ

こんにちはー!
老いを受け入れることが大事、と言いながら、
ホンネでは必死に老化に抵抗しているドクターコンちゃんです!

『LIFE SPAN~老いなき世界』1)と言う本を少し前に読みました。

昨年秋ごろから発売され、
今でも売れていると思われる本です。

人間は必ず老いて死に向かうわけですが、
その前に身体の老化による症状が、
死よりもかなり早く現れます。

その一つが、腰痛ですね!
腰痛なんて、
成人の半分以上が一生に一度は経験する症状とされています。

慢性腰痛に対する決定的な治療法はなく、
ずっと悩んでいる方が多いわけなので、
老化が予防できれば腰痛も予防できるじゃん!と興奮しました。

というわけで本に書いてある老化予防の実践例についてまとめてみます。

本の超簡単紹介『LIFE SPAN~老いなき世界』

老化研究の本。長寿遺伝子の発見がキモ。

老化のメカニズムと、その予防について、
酵母や動物での実験・研究を行っている
アメリカの医学者が書いた本です。

老化のメカニズムについて、
生物誕生時点の原初の細胞レベルから、
ヒトでの実験結果まで、
今わかっていることを論理的に説明しています。

単なる作者個人ひとりの経験から書かれたような巷の健康本ではなく、
批判的、論理的思考ができ、
自分も実験に携わっている医学研究者が、
ミクロな視点からマクロな視点まで、
世の中の研究結果から導き出した健康法なので、納得しやすいです。

ミクロな視点での、
活性化すると老化を遅らせることができる、
長寿遺伝子の発見についてが、この本のキモです。

老化予防には、いかにこの長寿遺伝子を働かせるかが大事というワケです。

なかなか分厚い本ですが、通読することをおススメします。

老化こそが多くの疾患の原因

この本では、老化を病気ととらえ、
病気ならば予防、治療できる、
という観点で行われている研究について紹介しています。

日本においても老化は病気ととられられていないため、
死亡診断書に「老衰」と書くことも基本的には推奨されていません。

しかし実際、細胞レベルの老化によって、
悪性腫瘍や自己免疫疾患の多くが発生しています。

老化の結果出現した無数の病気を、
現在のモグラたたき的な対応をしていては、
なかなかすべての病気を克服することはできないし、
医療経済的にも非効率であるとしています。

確かに、ガンなどの疾患群の上流にある原因である、
老化を予防できれば、
あらゆる疾患を予防でき、
身体の衰えも送らせて健康寿命が延びる!と言うわけです。

老化による骨、関節、筋の疾患を扱うボクら整形外科にとって、
目からウロコの
とんでもない夢の治療法だー!と感激に打ち震えました。

長寿遺伝子の働かせ方

身体に適度なストレスを与える

カロリー制限

どっかで聞いたことのある健康法、
その名も「食べ過ぎない」。

知ってた。

でも改めて、
酵母、動物、ヒトレベルまでの研究結果から示されると、納得です。

スミマセンでした。
食べ過ぎでした。
もう暴食やめます。

作者は、間欠的断食をおススメしてますね。

間欠的断食と言えば、
オートファジー関連の流行した本、
『「空腹」こそ最強のクスリ』2)の中でも
16時間断食を提唱してますね。

夕食食べてから、
朝食抜いて、
翌日の昼までなんも食べない。
これで16時間。

やってた。

すでにやってた。

朝食抜くと健康に悪いと信じ込んでいたから、
罪悪感を感じながら。

やってて良かった朝飯抜き。

運動

これもお馴染みの健康法、名付けて「適度な運動」。

知ってる。これも知ってる。

でも、あんまできてませんでしたスンマセン。

これからは定期的に運動します。

カッコいい肉体を作るとかの
ナルシシスティックな目的じゃなく。

まさにアンチエイジングのため、
健康に長生きするために。

寒冷刺激

寒いところにいると、
長寿遺伝子が活性化するらしいすよ。

そういえば長生きだった祖母は、
冬も寒いところで生活していたような・・・。

小さい頃、冬に保育園で、
上半身裸で「乾布摩擦」をやらされてた記憶があります。

なんて前時代的で暴力的で被虐的なイベントなんだ、
ああヤだヤだ、と思っていた気がします。

実はホントに体によかったんだ。

保育園の先生、今更ありがとう。

こんなボクを凍えさせてくれてありがとう。

いやホント、嫌みじゃなくてですよ。

こうして見ると、
昔の人の健康の知恵って、
経験的に得た非科学的なものかと思いきや、
ちゃんと最先端の科学で有効性が証明されるんですよね。

遺伝子レベルでですよ。

おばあちゃんの知恵袋、半端ねえっす。

長寿遺伝子を働かせる化学物質

ようはサプリとか薬ですね。

この本の著者と
その父親が飲んでいるモノを紹介します。

レスベラトロール

赤ワインに含まれているため
一時期話題となったようです。

マウスレベルでは有効性は証明されています。

ただし、人間がマウス実験と同様の有効量を摂取するとなると、
赤ワインを1日に750杯~1000杯飲まないといけないという風刺漫画があるようです。

一応、サプリとして売り出しているようです。

メトホルミン

糖尿病治療薬として、日本でも販売しています。

アメリカではどのみち自費診療なので、
自分で買っても病院で出してもらってもお金がかかります。

日本では保険診療で出してもらうには、
まず糖尿病と診断されなければなりません。

そのために糖尿病になろう!というのは本末転倒なので、
老化予防の薬として、厚労省の認可が降りるといいですね。

まずは老化が疾患として認められないとダメですね。

NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)

これは人間の細胞内でも作られており、
アボカド、ブロッコリー、キャベツなどにも含まれているそうです。

サプリとしてアメリカで主に販売されています。

気になったので販売価格を調べてみました。

日本国産。

高いっ!!!

製造している会社が限られているせいか、
サプリとしてはびっくりするような高額です。

この値段で、毎日、一生死ぬまで飲み続ける・・・?

ホントに効くのかどうかは死ぬまで分からないのに・・・?

アメリカ産もあります。

まだ高い!日本国産ほどではないですが。

これらの健康法について

上記のサプリがヒトで本当に効果があるのかどうかは、
大勢の人を対象にして、
飲む人たちと、飲まない人たちに分けて、
一生(!)かけて観察する必要があります。

(そこら辺については、この記事もご参考に)

とても何十年も、そんな長い期間、
こんな研究が続けられると思いませんし、
研究者の方も寿命がきてしまうでしょう。

研究結果を見届けて、その恩恵を受けられるのは、
何十年後に生きている人たちだけですね。

この著者や、その父親は、
自己責任で自分たちを実験台として飲んでいるのでしょう。

ただ、この医学者が、

著者
著者

「自分も、自分の父親も飲んでます!
年老いた父親も活力が増して、すごく体調良いです!
(注:あくまで個人の感想です)」

なんて言うと、
この本を読んだ人は、
自分も飲まなきゃ、ってなっちゃいますよね。

よくある健康食品やサプリの謳い文句みたいですよね・・・。

大手ネット通販サイトで、
アメリカ産NMNの、英語の口コミを見ると、
「気持ち悪くなってやめた」とか、
「体調悪い・・・」とかの低評価の口コミもあるんですよね。

ボクとしては、やっぱり高すぎるし、
カロリー制限や運動、寒冷刺激といった、
自分でタダでできる健康法を中心にすればいいと思いますね。

実は、メトホルミン以外で、
すでに日本で販売されている健康保険がきく医薬品の中にも、
長寿遺伝子を活性化する効果が見出されているものもあります。

今後、そういうものが老化予防の薬として
認可されるとうれしいですね・・・。

老化予防で腰痛も予防できるんじゃね?!

ここからが本題です。
(といってもほぼ終わりですが・・・)

腰痛の原因として、
疾患名はいろいろついてはいるものの、
椎間板など、脊椎の構成要素の老化が前提となります。

じゃあ、
老化予防ができれば、腰痛なくなるんじゃね?
という論理展開になるわけです。

実際に日本でも、腰痛と長寿遺伝子発現についての研究が行われ始めているようです。

現時点で決定的な治療法がない、
慢性腰痛に悩む方がいなくなるのは、
整形外科として嬉しい限りです。

でもその頃には、
老化で起きる疾患がなくなってしまうので、
ボクらはほぼ廃業ですね(^^;)

ガンなどを扱う内科や外科も廃業と。

ほとんどの医者は不要になりますね。

医学の進歩は我々の仕事を奪っていく~!

なんかAIの進歩で、
多くの仕事が減るのに似ていますね。

でも、治せない病気があるよりは、
そもそもそんな病気が起きない世の中の方が
ずっと幸せなのは明らかですね。

ボクも患者さんも、
上記の健康法を実践して、
健康寿命を延ばそう~~~!

というわけで、最後まで読んでくださって、

(遺伝子レベルで)ありがとうございました~!!!

参考資料:
1)LIFE SPAN~老いなき世界 デビッド・A・シンクレア (著), マシュー・D・ラプラント (著), 梶山 あゆみ (翻訳)
2)「空腹」こそ最強のクスリ 青木 厚 (著)

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