患者さんを代替医療に走らせるのは、医師の責任でもある ~『代替医療解剖』を読んで

読書ネタ

こんにちは!
ドクターコンちゃんです!

『代替医療解剖』っていう本の紹介です。
通常医療以外の治療を受けようかと考えた人には
一読がおススメですが、
辞書代わりにでも持っておいて
必要な項目の部分だけ読んでも損はありません。

ほとんどの代替医療には、プラセボ効果しかない

そもそも代替医療(または補完代替医療)とは、
ボクら医者が行う通常医療以外の治療のコトです。

例えば、日本で良く行われているものでは、
鍼・あんま・漢方などが該当します。

世界中にはその他たくさんの代替医療が存在します。

これら多数の代替医療について、
イギリスの科学者でもあり、
サイエンス・ライターでもある著者が
その代替医療発祥の歴史や
近年の科学的検証などを調べ
1冊にまとめてくれた本です。

ボクとしては、
現代医療の限界もある程度経験しているので
多少は科学的に効果があると思われる代替医療はないものかと
期待を込めて読みました。

ある治療法の効果の検証については
ランダム化比較試験(RCT)がなされるのが普通ですが、
海外では代替医療についても
たくさんRCTが行われています。

それらの研究を引き合いにまとめられている本ですが、
結論として

ほとんどの代替医療には、プラセボ効果しか見いだせない

ということでした。

(プラセボ効果やRCTについては
過去の記事『健康食品の有効性を見分ける最強のツール、RCT』もご参考にしてください。

本で紹介された主な代替医療一覧

この本の中で紹介された
世の中で多く行われている主な代替医療について
簡単に説明します。

体の経穴と言われる部位に針を刺すものです。

これまでにニセ鍼との比較研究がされています。
(ニセ鍼:実際には体には針は刺されず、手品の剣のように先端は筒の中に引っ込むもの。
患者側の見た目には、体に刺さったように見える。)

今のところ科学的には
プラセボ以上の効果があるという
強い根拠は見いだせないとのことです。

いくつかの痛みや吐き気には効くかもしれないとのことですが、
まだ強い科学的根拠は示されていません。

ホメオパシー

ある症状を引き起こす物質を溶液に入れかき混ぜ、
極限まで希釈(薄める)した液体を飲むというものです。

そもそもあまりにも薄まりすぎて
もともと混ぜた物質は液体に含まれておらず
科学的にはただの水を飲むことになります。

これまでの科学的検証では、
プラセボ効果しかないようです。

カイロプラクティック

脊椎のずれを治すというものだそうです。

腰痛については、
通常医療の理学療法のように
ある程度の効果がある可能性が示されています。

ただし通常医療と同様、
腰痛を劇的に改善するという
決定的な証拠はありません。

いろんな疾患を治せるという主張については
科学的根拠はありません。

頸椎への操作については
椎骨動脈に与える影響で
脳卒中を引きおこした事例があり
危険を伴います。

ハーブ療法

通常医療で使われる薬も、
もともとハーブから成分を抽出したものがあります。

ただし、代替医療のハーブ療法は
そのすべてについては、
科学的に有効性が確かめられてはいないようです。

なかには有効そうなものもあるようですが、
ハーブが効きそうという症状に対しては
多くは通常医療にも薬が存在するので
通常医療以上に効果があるかは分かりません。

科学的根拠に乏しいものもたくさん売られているようですので
この本などで調べてから買った方が良さそうです。

患者さんを代替医療に走らせるのは、医師の責任でもある

なぜ科学的根拠がない治療法に
たくさんの患者さんがお金や時間を費やすのでしょう。

その責任者は誰か。

効果が証明されていない、または反証された医療を広めた責任者トップテン
というものが
本の中に書かれていますので
以下に並べます。

  1. セレブリティ
  2. 医療関係者
  3. 大学
  4. 代替医療の導師(グル)たち
  5. メディア
  6. メディア(影響力が大きいという点で2回登場)
  7. 医師
  8. 代替医療の協会
  9. 政府と規制担当当局
  10. 世界保健機関(WHO)

7番に医師と書いてあり、びっくりしました。

その理由について少し抜粋すると、

患者は、医師は自分のためにろくに時間を割いてくれず、
思いやりも共感も無いと感じている。
それに対して、代替医療を受けている患者は、
自分のために時間をかけ、
理解と共感を示してくれることをセラピストに求め、
セラピストはおおむねそれに応えていることがわかる。
ある意味では、医師のなかには、
患者に対する思いやりを代替療法の施術者に委託しているものがいるということだ。

なかなか辛辣ですが、
思い当たるフシもあります。

そもそもプラセボ効果については
信頼関係が無ければ
まともに働きません。

共感を示してくれない不親切な医者の言うことは
科学的根拠があっても信頼できず、
そのためプラセボ効果も得られません。

逆に親切な代替医療セラピストの言うことは
科学的根拠が乏しくても信頼するので、
そのためプラセボ効果は最大になります。

つまり、
真に正しい医療を提供するためには、
医者も患者さんの話をしっかり聞き、共感を示し、
親切にすることが大切ということですね。

そうすれば、
科学的根拠が十分な治療と、
プラス最大のプラセボ効果で、
代替医療より大きな効果が期待できるはずです。

まとめ

この本では
これまでの科学的検証では
世界に広まっている代替医療のほとんどが
プラセボ効果しかないことが示されています。

その中にも、
一部の症状に対しては
効果があると証明されたものもあり、
それは利用してもよいかと考えます。

ただ、理論的にも科学的検証でも
あらゆる疾患に効くというものはなさそうなので
代替医療を利用するなら
しっかり選んで利用する必要があります。

ボクら医者もそういう知識をある程度持って
患者さんにアドバイスしなければならないと思います。

この本で医者が最も重視すべきは
患者さんに寄り添う姿勢というのは
プラセボ効果を引き出すためにも重要であるという
科学的根拠であると思います。

というワケで、
プラセボ効果と、科学的根拠に基づく治療効果のいずれも
最大の効果を引き出せるような
良医を目指していくぞと
決意を新たにしたところで、

最後まで読んでくださって、
ありがとうございました~!!!

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