こんにちは!
医療倫理についてはどっぷり首まで浸かっているつもりですが
SF映画やSFマンガにおける
遺伝子操作による肉体改造というワードには胸躍らせてしまう
マッド・サイエンティスティックなドクターコンちゃんです!
さて先日、
東京医科歯科大学などの研究チームが
マウスの腱にある、張力を感知する膜たんぱく質の働きを強めると
ジャンプ力や走力がアップするという研究結果を出したとの報道がありました。
この膜たんぱく質は、その名も
PIEZO1(ピエゾワン)。
西アフリカがルーツと思われるジャマイカの陸上選手には
PIEZO1の働きが高くなる遺伝子変異を持つ人が多いとのことです。
つまりこの遺伝子を活性化する薬ができるか
または遺伝子変異を人為的に組み込めれば
筋力アップにつながるということですよね。
筋力の衰えた高齢者などに対して
筋力増強する治療につながるのではないかと
期待されています。
すごい。
ついに来たか。
健康寿命延伸につながることに超期待
超高齢者社会を迎えつつある日本にとって
単なる寿命ではなく
健康寿命を延ばすことは
喫緊の課題です。
健康寿命、すなわち
アタマと筋力の維持ではないかと。
認知能力と筋力などの身体機能の関係性は良く知られていて
運動が認知機能低下予防に役立つとされています。
筋力の維持は
頭で考えて、能動的に筋肉を使うことで達成されるので
体の運動すなわちアタマの運動でもあるわけです。
運動したほうが子供の学習効果も上がると
『スマホ脳』にも書かれていましたし。
運動による身体刺激が脳へもフィードバックされ
さらに脳の働きも活性化されるのではないかと。
高齢者が脚の骨折などであまり動けなくなると
とたんに元気がなくなり
認知症も進んでしまうということは
良く経験します。
もちろんもともと筋力があっても
脳の疾患などで認知機能が衰えれば
自分で動こうという意欲を失い
筋力も失われますので、
筋力に対する治療だけすれば
認知症が防げるわけではないですが。
ただ脳と身体機能はお互いに密接に関係していますので
少なくとも筋力増強の方面からのアプローチで
認知症予防の一助になるのであれば
素晴らしいことです。
ボクは整形外科ですので
脳疾患に関する治療には携わってきておりませんが
お年寄りの筋力低下による問題は
イヤというほど身に染みております。
骨折の手術をした後の高齢者に
筋肉増強剤なる薬を投与できれば
どんなにいいかと思っていました。
というワケで、
ついに来たか、と思うのです。
まだまだ実際に臨床応用できるのかも未知数ですが
医療の力で肉体の加齢変化を克服する第一歩のような気もして
イチ医者として
小躍りしたくなる気持ちです。
(ちょっと素人みたいに浮かれすぎですが(^^;)
ドーピング使用の懸念
ただしまあ
当然の懸念として
ドーピングに使用される恐れも指摘されています。
国によっては、
医療界で臨床応用される前に
オリンピック選手に秘密裏に使用される可能性もあります。
しかも新しい技術ですと
それを検出する方法がないかもしれません。
生物学的に
ヒトではあり得ないような記録が出たりして。
「〇〇国の選手は、今年目覚ましい世界記録ラッシュですね~!」
みたいな感じで。
富や名声のために、こそっと悪用するのは許されませんが、
でも実際、薬で安全に筋力増強できるようになったら
誰もその使用を止めることはできないでしょうね。
高齢者の治療に応用されるようになったら、
骨折した後のおじいちゃんの方が
孫より脚早くなっちゃった、
みたいなことも起きたりしてね。
(それはちょっと言いすぎですが(^^;)
どこからを病的な筋力の低下とみなすのかも線引きが難しいですし
より早く治療介入した方が予防できるという話になっていきそうですし
そうなると当然、
比較的筋力が維持されている人、
いわゆる健常者への使用も広まっていくでしょうね。
もはや、スポーツなど
努力して筋力つけて身体機能を競い合うなんていう概念自体が
時代遅れになってしまうのではという恐れもあります。
遺伝子操作による筋力増強は許容されるか
今回の発見をもとに作られる治療法が、
単純にPIEZO1の働きを活性化するための体内物質を摂取するという薬になるのか、
またはPIEZO1の働きを活性化する変異遺伝子を組み込む治療に結びつくのか、
まだ分かりません。
きっと後者の方が劇的な効果は出やすいでしょうケド。
今回の高齢者に対する筋力増強の話も、
人間に残されるであろう最後の疾患と言える
『老化』に対する治療のくくりになると思います。
老化を抑制する遺伝子は発見が相次いでいますし
その遺伝子を活性化するとされる物質も
すでにサプリレベルでは販売され始めています。
(そのサプリが実際に効果あるのかはまだ不明ですが)
きっと人類は、最終的に遺伝子治療で
老化を治療しようとするに違いありません。
健常者に対する遺伝子操作、肉体改造は
SFの世界では当たり前のように昔からあるネタですが
じわじわと現実世界になりそうな予感です。
医療倫理の点から、なかなか進まないでしょうけどね。
そもそも全ゲノムの中のほんの一部であっても遺伝子操作は
これまでのヒトとは異なった生物になることを意味します。
または
偶然の遺伝子変異が自然の進化の本態とするならば、
人為的な進化とも言えますか。
これまで自然が行っていたことを
人為的に行うことに対する
本能的な恐怖感こそが医療倫理感の正体でしょう。
今後こういった新しい治療については
必ず医療倫理の論争が起きるでしょうが、
倫理観だけで治療の側面を持つ技術を規制することは不可能です。
規制すれば
大金が動くブラックマーケットができるのが
世の常です。
それこそ、億万長者だけが
ブラックマーケットで遺伝子治療を行うことで
超長寿、または不老不死になれるなんてことになったら
SF的ディストピア以外の何物でもありません。
世代交代に伴った世間の意識の慣れが
みんな共通の新しい医療倫理観を形成していくでしょうが
その前に老化を予防する遺伝子治療が開発されてしまったら・・・。
世間の医療倫理の形成を待たずして
治療に飛びつく人は後を絶たないでしょうね・・・
なんて遠くを見つめて夢想に浸ってしまいましたが
ボクとしては自分が生きている間に
治療として安全な筋力増強薬ができることを
秘かに期待してもいます。
それまでは日々マッチョになるべく
筋肉体操を続けます!
(といいつつ帰宅後のビールがなによりも至福のひと時・・・)
最後まで読んでくださって
ムキムキありがとうございました~!!!
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