健康食品の有効性を見分ける最強のツール、RCT

勝手にメス入れ医療問題

こんにちは!
お金をかけずに健康になる!がモットーのドクターコンちゃんです!

巷には、様々なサプリ、健康食品、民間療法など、
健康になりたい人のための、いろんな商品が出回ってますよね。

食事から栄養を十分摂れない人のための栄養補助食品は、
適切な量で使用すれば問題ないと思います。

でもボクらが見ると、明らかに胡散臭い健康食品も多いです。

ただ、これだけ次々と新商品が出たり、
信ぴょう性が低いと思われる商品が長年販売されているのを見ると、
やはりそれだけニーズがあるのだと思います。

金融リテラシーが低いと、ぼったくり金融商品と知らずに買わされるのと同じで、
医療リテラシーが低いと、怪しい健康食品などにひっかかってしまうと思われます。

というわけで、そういう商品の有効性(というか胡散臭さ?)を見分ける方法についてお話します。

ちなみに、日本ではサプリと健康食品が同様のくくりで食品として扱われているため、
今回は併せて健康食品と呼ばせて頂きます。

結論から言うと、RCT(randomized controlled trial:ランダム化比較試験)というヒトでの臨床研究がされていないものは、
どんな健康食品や健康法であろうと、信ぴょう性が低い、ということになります。

今回のポイントは以下です。

  • 個人の経験談は意味がない
  • 販売者側の表現は信ぴょう性が低い
  • ヒト(特に日本人)でのRCTがないものは効果が立証されていない
  • 迷ったら厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』(eJIM)を参考にする
  • 迷ったらかかりつけ医に聞いてみる

さらに詳しく解説します。

個人の経験談は意味がない

健康食品の広告、宣伝については、
必ずと言っていいほど、個人の経験談が入っています。

しかし近年、健康食品については、
それが体にいいとか、
健康になれるとか、
疾患が良くなるとか、
そういう有効性について言及してはいけないと、国が定めています。

だから病院のホームページでも、この治療法で良くなるとかは言ってはいけないため、
こんな治療法がある、という紹介だけにとどめる必要があります。

そして、個人の経験談でも、
この治療法を受けて疾患が良くなったとか、
これを飲んで〇〇がよくなったとか、
有効性を謳う文言は載せてはいけないことになりました。

だから、CMや広告での、健康食品の個人の感想を良く見ると、
〇〇が良くなったとは言ってません。

利用者A
利用者A

年取ってから階段の昇り降りで膝の調子が悪くて・・・

出かけるのも億劫になってました

ここで商品の紹介。

利用者A
利用者A

今は調子いいですっ

毎日ウォーキングしてます
続けたいですね

といった感じの、
飲んで膝の痛みが良くなったのかどうか、
ビミョーな言い回しになっています。

また、仮に個人の経験談で(ネット通販の口コミなど含めて)、
誰かがその健康食品を飲んで調子が良くなった、と言ったとしても、
その健康食品のおかげとは限りません。

これは、実際に身近な家族や友人が良いと言っていても、同じことです。

他の生活習慣や運動習慣の変化のせいかもしれませんし、
プラセボ効果(後述します)の可能性もあります。

しかし、副作用などの有害事象についての口コミは、
意味のある場合もあります。

有害事象の報告が多くなって、販売中止になる健康食品もありますしね。

だからこそ、本来は商品発売前に臨床試験をやっておけ、というところですよね。

プラセボ(偽薬)効果

これは、効果がある薬だと信じて服用すると、
実際にはその成分が入っていなくても、
効果があった気になってしまう、人間の心理的効果ですね。

例えば、痛み止めだと言ってビタミン剤を飲んでもらっても、
痛みが楽になったと感じる、というものです。

これは、薬以外にも、偽手術(シャム手術と呼ばれます)、偽注射など、
ありとあらゆる治療法について、データ上、明らかに存在する効果です。

血液検査など、客観的データで効果が示されるものではなく、
痛みなど、主観的な自覚症状で有効性を判断する場合などに、
プラセボ効果がどれくらいあるのかが問題になります。

本当の治療をしなくても、治療された気になるだけで良くなるのなら、
わざわざ副作用の可能性のある薬を飲んだり、
痛い注射されたリ、手術で体を切られたりする必要はないのですから。

そのため、新しい内服薬、注射薬については、
販売前に、プラセボ効果の影響を排除した臨床研究が必要になります。

すでに世の中で行われている手術についても、
比較的新しいモノは、こういう研究が行われています。

さて、このプラセボ効果の影響をできるだけ除くための研究手法が、
RCT(randomized controlled trial:ランダム化比較試験)です。

RCT(randomized controlled trial:ランダム化比較試験)

RCTの方法

この研究手法は、その名の通り、試験に同意した被験者(臨床研究なら患者さん)を
2つのグループにランダムに分けます

一方のグループには本物の薬
もう一方のグループにはニセモノの薬を飲んでもらいます。

そして、その効果を、二つのグループの間で比較するというものです。

この時に重要なのは、
被験者は、自分が本物の薬かニセモノの薬か、
どちらを飲んでいるのか知らされないことです。

これによって、先述のプラセボ効果の影響が、2つのグループ間で差がなくなるのです。

さらに、検査や診察を行う観察者(医者)も、
目の前の人が、どちらのグループに属するのか知らされない方が、
最も客観的に近いデータが取れます

観察者にも先入観があると、
症状の聞き取りなどの際に、
本物の薬を飲んだ人の方が良くなったように判断してしまう可能性があるからです。

特に、その薬を国に承認してもらいたいとか、
商品を販売する側の人間が観察者になってしまうと、
以前問題にもなったような、データの改ざんが行われる危険もあります。

というワケで、研究結果が自分たちの損得に関係ない、
第3者機関によるRCTこそが、公正な研究と言えます。

ちなみに、研究の対象となる薬を、手術や、その他の治療法に置き換えれば、ありとあらゆる治療法でRCTは可能となります。

すごいのは、手術についての研究です。

ニセ手術のグループに選ばれた患者さんは、
全身麻酔で眠ってもらい、皮膚に傷だけつけて内部では何もせず、
傷を縫って終わり、という徹底ぶりです。

それくらいしないと、プラセボ効果の影響は排除できないという事です。

RCTの問題点

倫理的な問題

一方のグループでは、ニセモノの薬や、ニセモノの治療をされるワケなので、
本物の治療法での効果を期待する患者さんにとっては、不満があります。

だから、過去のデータから、
明らかにこの治療法は効果があると思われるモノや、
命に関わる病気の治療については、
RCTを行うこと自体に倫理的問題があるため、
通常、研究が行われることはありません。

例えば、胃がん患者さんに対する胃摘出術が本当に効果があるのか、というRCTは、
手術をされないグループに選ばれた場合、治療が遅れて命を縮める可能性がありますよね。

この研究は、あくまで、本当にその治療法が医学的に意味があるのかどうか分からない時に行われるものです。

ですので、研究に参加する患者さん側が納得し、
病院や研究機関の倫理規定をクリアした場合にのみ行えます。

RCTにはお金も時間もかかる

前述のように、参加する被験者側にしてみれば、
ニセモノの治療を受ける可能性があるため、
それで治療費を取られたのでは、たまったもんではないですよね。

だから、こういう研究における被験者は、基本的に本物の治療を受けても、治療は無料になります(研究者側の負担になります)。

アメリカのように、どのみち本物の治療には高額な自費診療しかない場合は、
タダになるならと、研究に参加する人も集めやすいでしょう。

日本では、そもそもの治療費が国民皆保険のおかげで低く抑えられていますので、
治療費の問題で研究に参加しようという人はあまりいないと思われます。

お金を出しても、本物の治療を受けたい、と思う人の方が多いのではないでしょうか。

さらに、この研究のためには、
まず被験者を募り、
治療後、しばらく経過を見る必要もあるので、
結果が出るまでに時間がかかります。

その分、人件費もかかります。

日本での健康食品に関するRCTの現状

海外で販売実績がある薬であっても、
人種差や、食べ物を含めた生活習慣の違いによって、
その効果や副作用に違いが出る可能性がありますので、
日本人での検討が必要になります。

なので、製薬会社が、新しい薬の販売を日本国内で、保険適応として行う際には、国の承認を得るために、
時間とお金をかけてRCTなどの臨床試験が日本人を被験者として行われます。

健康食品についてはどうでしょうか。

単なる食品扱いの健康食品の類は、
薬よりも国の認可が降りやすく、
大規模なRCTをやらなくても販売できます。

RCTにはとにかくお金も手間もかかるため、
やらなくても販売できるなら、会社側があまりやりたがらないですよね。

そもそも、RCTで、効かないことがハッキリしたら、
売れるものも売れなくなるワケですし。

販売者側としては、研究結果がないほうが都合が良いことも多いでしょう。

というワケで、健康食品、またはその他の民間療法の有効性を検証するためには、
利益相反がない第3者機関での研究が必要です。

アメリカでは、さまざまな健康食品、民間療法についても国の機関によるRCTが比較的多く行われていますが、
日本ではお金や時間の問題からか、こういった研究は多くは行われていません。

日本人でのRCTがない商品の有効性をどう判断するか

日本で販売される健康食品の多くは、
日本人での臨床研究はされていないことになります。

つまり、厳密には日本人での有効性、安全性は立証されていないことになります。

ハッキリ言って、その時点で有効性は不明なので、
わざわざ高額なお金を支払う価値はないと思われます。

それでも使ってみたい、と思われる方は、
どうやって判断したらよいのでしょうか。

海外のヒトでの研究結果を参考にする

日本人のデータがないなら、ヒトでの研究結果は、
海外での(日本人以外の)ものを参考にするしかありません。

通常、英語で書かれていますので、
英語の医学論文を読み慣れていない人にはハードルが高いと思われますが、
ネットで概要を読むだけなら、誰でもアクセス可能です。

しかし、先述のように、人種差や、食生活を含めた生活習慣の違いについて考慮されたものではありません。

ちなみに、ある程度データがある商品、民間療法については、
厚生労働省ホームページ内の、
厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』(eJIM : evidence-based Japanese Integrative Medicine)
に日本語でまとめられています。

ただし、このデータもほとんどは、
強いエビデンスを示すものがない、という事になります。

つまり、効くのか効かないのかよく分かっていないものが多いということです。

でも、このホームページ内に書かれていることを読むと、
判断する際の考え方を学ぶことはできます。

ヒトでの十分な研究がない商品は論外

ただし、ヒトで十分研究されていないような商品も出回っています。

そもそもこういうものは、
ボクら医師にとっては論外な商品なのですが・・・。

これらは、細菌、酵母、マウスなどの小動物での研究結果を主な根拠として販売されているようです。

または、RCTとは別の、ヒトの細胞などの基礎医学研究の結果を利用していると思われます。

また、すでにある食品などから、ある成分のみを抽出、濃縮して売られているものもあります。

問題は、
理論上よいだろうと思われるものが、
必ずしもヒトで(もっと言えば日本人で)有効、安全であるとは限らない
という事です。

動物実験までは効果、安全性が証明されても、
ヒトでも同じように良いとは限りません。

そもそも生物が違うのですから、
体の反応も違いますし、
ここからが体に効く容量、これ以上は副作用が出る容量、
というのも違います。

自然に存在する食品の成分を濃縮したものも、
自然にはあり得ない高濃度なものを摂取することになるので、
過剰摂取による副作用があり得ます。

つまり、自然食品由来だから安全とは限らないのです。

薬だったら、
ヒトでの臨床研究が十分されてないものが国の承認を得ることはありませんし、
ボクらも怖くて処方できません。

でも、世の中の健康食品は、
実はこういうコワイもの、
もしくは単なるまがい物がたくさん売られているようです。

販売側の表現は参考にならない

先ほども書きましたが、健康食品の類は、健康食品という名のくせに、健康になれると謳ってはいけないことになっています。

だから、個人の感想など、イメージ戦略だけで、あたかも健康になれる、
症状が良くなると勘違いさせるような表現が使われています
(先ほども述べましたが、個人の感想はそもそも意味がありません)。

それ自体が、もはや詐欺スレスレの販売法な気がしますが・・・。

『日本人でのRCTで効果が立証されました!』って、
実際の論文があればいいのですが、まあ普通ないですね。

売る方としては、あくまで、食品はただの食品です、
健康になれるかどうかは知りません、とのポーズを取っています。

でも、消費者は、健康食品においしさを求めてないですよね。

健康になりたくて買うワケですよね。

もはや、健康食品て、
言葉の定義からして論理破綻してますよね。

というワケで、病院で出される薬と違って、健康食品というのは、
その効果を販売者側すら保証もしていない(してもいけない)、
ということなので、販売者の発信する情報(もしくは広告料をもらって宣伝しているブログの情報)は全くあてになりません。

かかりつけ医に聞いてみる

上記のように、販売会社側の広告、CMは、
そもそも信用に値しないものが多いです。

だって、効果を謳ってはいけないんですから。

自分自身で、先ほどの厚労省ホームページ、
厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』(eJIM : evidence-based Japanese Integrative Medicine)
で調べて頂くのも大事です。

ただし、実際にはこのホームページに載っていない商品がほとんどですし、
載っていても一般の人にはよく理解できない文言が多い気がします。

また、一般の人が、英語論文を読んで自分で判断するというのもほぼ不可能でしょう。

そんな時は、かかりつけ医に聞いてみましょう。

ただ、ほとんどの場合、
「そんなものは効かない」
「よく分からない」
と言われるでしょうケド。

実際に、データがなければ、分からないものは分からないんです。

ボクらは、さまざまな薬による体への作用や、
疾患発症のメカニズムについて、
一般の人よりは理解できていることが多いです。

そういった知識から、健康食品の類が、
どのように体に作用するのかを推測して、
理論的に効かなさそう、そもそも何の成分が入っているんだか分からないから危なそう、という判断を下します。

効かないと思われるモノ、
よく分からないモノをおススメしないのは、
医師として当然ですよね。

ボクの考えとしては、
おススメはしないけれども、
国が販売を許可していて、
副作用が全くでないモノなら、
お金に余裕があれば自己責任で買ってもいいんじゃないか、というくらいです。

患者さんには、
「効果があるとは思えないけど」
とは言いますけれどね。

体を健康にする、
すなわち何らかの変化を体に及ぼすモノというのは、
必ず一定確率で誰かに副作用が出ます。

誰にも副作用が全くでないというのは、
体にほぼ何の作用も及ぼさないのと同義なので、
なにも飲んでいないのと一緒です。

言ってみれば、『買うと健康になれる壺』みたいなもんですね(^^;)

信じて壺を買うのは個人の自由ですし、
それを買って生活が困窮するわけではないなら、
個人の満足が得られればいいのかな、とは思います。

ただ、原材料や製造工程から考えて、
ほとんどの商品は、効果が保証されていないくせに副作用が出る可能性があるものだと思います。

医師としては、これを看過できないので、
ほとんどの商品をおススメはできません。

健康食品でも副作用は出る

さきほどから何度も出てきてますが、
健康食品と呼ばれるモノでも、副作用は出る可能性があります。

健康食品だから体に優しく、副作用も出ない、
だから試しに飲んでみよう、というのが、多くの方の考えかなと思います。

でも、繰り返しになりますが、
これまでにも、たまに健康食品で集団での副作用の報告はありますし、
自然な食品由来でも高濃度の成分を摂取することで過剰摂取となる危険もあります。

また、現在飲んでいる、病院から処方された薬との相互作用で、問題が生じることもあります。

あと、モノによっては、出血しやすくなるため、
手術前にやめなければいけないものもあります。

こうなると、ほとんど薬と同様の扱いになるので、
摂取している健康食品はお薬手帳に記載するなりして、
医師や薬剤師がチェックできるようにしたほうが良いのではないかと思います。

健康食品単独でも十分副作用が出る可能性があり、
しかも病院での治療に不具合を生じる可能性があり、
さらに効果が不明となると、
果たして摂取する意味があるのかどうか、とも思うワケです。

まとめ

というワケで、健康食品についての考え方を説明しました。

今回のポイントをもう一度書きます。

  • 個人の経験談は意味がない
  • 販売者側の表現は信ぴょう性が低い
  • ヒト(特に日本人)でのRCTがないものは効果が立証されていない
  • 迷ったら厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』(eJIM)を参考にする
  • 迷ったらかかりつけ医に聞いてみる

残念ながら、現在の所、
多くの健康食品が、その有効性が明らかにされないまま、
高額なお金で販売されています。

最終的には信じている人の自由とはいえ、
消費者がよく知らないのをいいことに、
効果のないものを高額で売りつけられている方が多くいるかと思うと、気の毒になります。

その辺の状況は、金融商品と似ています。

結局、患者さんがそういうものに頼らざるを得ないのは、
現代医療がまだ未発達なせいでもあるので、
ボクらもせめて最新の知識を得るように、襟を正さねば、と感じます。

というワケで、ついつい長くなってしまいましたが、
最後まで読んでくださって
ありがとうございましたー!

参考資料:厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』(eJIM : evidence-based Japanese Integrative Medicine)

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