外科不要論~外傷だけが、外科に残る最後のお仕事。

医者雑談

こんにちは!
ドクターコンちゃんです!

のっけから外科不要とか書いてしまって、
オペ好き医師としては自己矛盾の極みですが(^^;)

実際、昔からホントは思っていることです。

今はまだ医療が未発達なので
オペが必要ですが、
将来的には、外科は不要になると思っています。

だって、オペなんて明らかに野蛮で、
原始的な治療じゃないですか。
(ああ、なんて自虐的な気分・・・)

特に、ガン治療においてそう思います。

悪い所を見つけたら、
体をメスで切って、
正常組織ごと取ってしまえだなんて
なんて乱暴な。

ホントは必要な臓器を取ってしまうので、
どんなに再建術をしたとしても
元通りにはなりません。

体にメスを入れれば
必ず何らかの後遺症が残ります。

最近でこそ、
抗がん剤などの内科的治療の進歩が目覚ましく、
できるだけ薬などでがん組織を小さくして、
オペをしたとしても
正常組織をできるだけ残すように、
すなわち正常な機能をできるだけ残すように努力されています。

昔はもっと大きく正常組織も取られていました。

でも、昔はしょうがなかったんです。
オペに頼るしかなかったんですから。

そんな時代だったからでしょうか、
漫画『ブラックジャック』でも、
まるで天才外科医がオペをすれば
どんな病気でも治ってしまうかのような
幻想で溢れていました。

最近は
薬や放射線治療なども組み合わせて
できるだけオペは最小限に、
っていう風潮です。

でも究極的には、オペなしで
薬だけで治るのがガン治療の目標かと。

そうすれば
危険なオペの合併症や
オペによる後遺症を避けられるワケですからね。

そもそもガンって
正常細胞がガン化して
異常増殖が止められなくなった状態ですので
要は体の中から自然に発生した
内因性の疾患と言えます。
(もちろん外部要因もリスクになりますが)

内因性の疾患については
薬などの内科的疾患で治すのが
オペによって正常機能を失われないので
一番良いのではないかと。

そういう時代になったら、
医学部の講義で、
「昔は手術という
原始的な方法で治療していたんだよ」
なんて話が教授からされるのかなと。

では、我々整形外科領域の疾患はどうでしょうか。

もちろん悪性腫瘍もありますので
そういった病気は
薬で治るようになるのが
最終目標です。

でも、整形外科でオペの対象となる、
脊椎や膝が悪くなるなどの多くの疾患は
加齢が原因になることが多いです。

これもまた、
加齢で悪くなったところを
切り取って金属に置き換えるなど
考えてみると、なかなか野蛮ですね(^^;)

加齢性疾患というのは
当たり前ですが老化が原因なワケです。

これまでは老化は病気ではないし
治せないというのが通念でしたから、
当然、加齢性疾患も薬では治せない
という理屈になっていました。

でも近年、
老化を予防する医学研究が盛んになり、
薬などによる老化予防ができれば
ボクらがオペをしている疾患もなくなるのでは
っていう期待が出てきました。

老化も内因性の病気とすれば
やっぱり内科的治療で治すのがスジで
オペなんて不要になるのではと思います。

ちなみに細胞のがん化というのも
老化がベースになっていることが多く
老化予防の究極形が完成した世界では
ガンという疾患すら存在しなくなるってことです。

まあそうなると
外科不要どころか
医者不要になるでしょうね。

でも、外因性の疾患、
外傷がまだ残っていました。

こればっかりは
体の中から発生してくるものではないので
薬で予防はできません。

映画『マトリックス』みたいに
人間が培養液の中で生きるのでなければ
犬も歩けば棒に当たるじゃありませんが、
人も外を歩いていれば
転倒や事故などでケガをしますからね。

整形外科で外傷と言えば
主に骨折ということですが、
もともとの構造が壊れて
元の場所からずれてしまってますので
薬で治せるとは思えません。

無理やり薬で骨がくっついたとしても
すごい変形が残ってしまいそうです。

やっぱりこの領域だけは
最後までオペが必要かと。

内臓の外傷も同じ理由で、
最後までオペが必要ではないかと思います。

外傷もSF映画みたいに
体内のナノマシンが治してくれるようになると
話は別ですが。

まだまだそんな未来は
現実的とは思えません。

ただ、
ガンにしても
整形外科の加齢性疾患にしても
まだまだすぐには無くならなさそうです。

だからオペもまだまだ無くなりません。

ボクらのやってる外科治療は
医学がまだ未熟であるからこそ存在する
過渡期の治療であると自覚しております。

タイトルに外科不要論なんて書きましたが、
医学の最終形態においては
外科は不要であるし、
それを医学者は皆目指している、ということです。

ガン研究とか
老化予防研究とかしている人に比べて
自分のやっていることは
未来を見れていないなあと思うこともあります。

オペっていうのは
とりあえず今、現代をしのぐだけの
将来は失われていく治療法なのだなあと
少し虚しく感じることもあります。

でもオペが必要でなくなった未来は
夢のような世界であることは間違いありません。

将来的にも外傷患者がいる限り、
自分の技術は
社会に必要とされるのだという自負を抱きつつ
今できることを精一杯やりたいと思います。

こんな、おセンチな気分になってしまうのは
秋だからでしょうか・・・
(焼き芋食べたい・・・)

ということで、最後まで読んでくださって、
ありがとうございました~!

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