医療におけるサービス・プロフィット・チェーン ~従業員第一主義は医療サービスでも通用するか?

医者雑談

こんにちは!
『幸福な職場推進委員会』委員長のドクターコンちゃんです!

冗談ですよ(^^;)
そんな部署はウチにはありません。

サービス業界における、ビジネス成功のための考え方として、
サービス・プロフィット・チェーンというのがあります。

顧客至上主義というより、
従業員至上主義とでもいうものです。

企業経営者は、まず第一に従業員の幸福を考え、
結局それが顧客サービス向上につながり、
利益増加、企業の成長につながるという、
ポジティブなループが回るというものです。

企業収益 → 従業員の金銭的・精神的報酬アップ → 従業員ロイヤリティ・おもてなし精神の向上 → 顧客満足度・顧客ロイヤリティの向上 → 顧客数増加 → 企業収益アップ、企業成長 → 従業員の報酬アップ → ・・・

従業員第一主義の企業

昔、どこかの有名企業の社長が、

有名企業社長
有名企業社長

社員が幸せでない会社など、存在意義なし!!!

なんて言葉を遺したという話を聞いたことがあります。

昔は、チョット何言ってるかよく分かりませんでした。

ドクターコンちゃん
ドクターコンちゃん

商売なら、顧客第一じゃないの?

と思っていたからです。

顧客第一主義にしないと、企業間の競争社会で負けてしまうだろうと。

サービス業の一種である病院においても、同じような感覚でいました。

しかし、ある程度の期間、この医療サービス業界で働いているうち、
ボクの考えは間違っていると思い始めました。

患者さん第一主義は、対外的には聞こえはいいものの、
ともすれば奴隷労働になってしまうからです。

そんな中、サービス・プロフィット・チェーンという言葉に出会いました。

サービス業に限らず、
従業員に報いようとする企業、
従業員が幸せに働ける企業は、
結局提供サービスが良くなり、売り上げが上がり、成長するとのことです。

じゃあ、サービス業の一つである医療においても、
これは当てはまるのではないかと。

日本の医療は患者さん第一主義でようやく成り立っていた

医療は、健康や命に関わる領域のため、
モロ国民のセーフティーネットです。

そのサービスの整備、充実は、
みんなが安心・安全に暮らすために必要不可欠です。

日本の国民皆保険制度のおかげで、
世界的にも高水準の医療を、皆が低価格で享受できており、
そのため、日本の平均寿命は世界一で維持されています。

しかし、日本の人口ピラミッドが崩れ、
高齢者人口が増加するにつれ、医療サービスを利用する人口も増えてきました。

人的資源には限りがあるので、コンビニ受診とも揶揄されるような、
24時間365日、救急を含めた外来を受診可能という体制を維持するには、
サービス提供者側の時間的負担の増加に依存することになります。

他の先進国にも、医療費の個人負担が完全無料という、
日本以上に国民皆保険が整備されている国もありますが、
日本のように、いつでも誰でも好きな医療機関を受診できる国というのはありません。

専門医を受診するには、〇か月待ちが当たり前ということです。

かつて、アメリカのヒラリー・クリントンが、日本の医療を視察した時に、日本の勤務医のことを、
聖職者さながらの自己犠牲
と評したそうです。

ヒラリー・クリントンが言わんとしているのは、
アメリカの医者はそんなに身を犠牲にしてまで働かない、
というコトだと思います。

従業員の権利(というか個人の権利)の意識が強いアメリカでは、
医療サービスにおいても、サービス提供者側の休む権利を確保している、
というコトかなと。

要は外から見ても、日本の医療業界は患者さん第一主義が一般的で、医療者の自己犠牲によって維持されてきたと思われます。

いかにも利他的な、
古き良き日本の精神に支えられた医療制度であり、
これはこれで世界に誇る日本の精神文化の賜物だとは思います。

患者さん第一主義の限界

しかし近年、患者数の増加と、
情報のオープン化に伴う、患者側の権利意識上昇などで、
医療者の時間的負担が増えてきました。

さらに過労死問題、労働者の意識改革などの背景も相まって、
これまでの医療者の働き方を維持するのが困難になりつつあります。

実際、医療界でもブラック労働の実態が暴かれるようになり、
本当に人が必要な領域から、
人材が逃げてしまう事態となりつつあります。

献身性は医療者にとって必要な、最も根源的な資質だとは思いますが、
働き手が、自分の生活を犠牲にしているという思いを抱いてしまったら、
どうなるでしょう。

・頑張り続けて心身を壊す。
・自分が壊れる前にさっさと逃げ出す。
・仕事の手を抜く。

上記の3択になるのではと思います。

ブラック企業で働き続ける弊害と同様かと。

ボク自身、過去の経験から言えば、
あまりに忙しすぎて自分の時間が無くなると、精神的に参ってきて、
良い医療を提供することの前に、自分の心身を守る必要を感じ、
仕事量を減らす(すなわち患者数を減らす)ことばかり考えるようになります。

ドクターコンちゃん
ドクターコンちゃん

昨日もあまり寝てないし、
家に帰ってもいつもみんな寝てて独りでご飯だし、
深夜、休日に病院に呼ばれて行く時も、家族の視線がツラい・・・
もうムリ・・・辞めたい・・・

みたいな感じスね(^-^;

結局、人手が不足し、辞めてない人もいい加減な仕事をすることで、
医療サービスの低下につながり、国民生活に悪影響を及ぼします。

献身の精神だけで良い仕事が続けられないのは、
どんな職種であれ同じでしょう。

患者さんへの医療サービスの質を維持するためには、
サービス提供者の権利確保が大前提ではないかと思うワケです。

医療にもサービス・プロフィット・チェーンの導入を!

ということで、いよいよ日本の医療においても、
献身のみに甘んじるのはやめたほうが良いと。

かといって医療サービスの低下は防ぎたいと。

そこで活躍してくれそうなのが、

サービス・プロフィット・チェーンなワケです。

ブランド力のある有名ホテルでは、昔からこれが定着しているようです。

病院に当てはめて考えてみましょう。

(ちなみにここで言う従業員は、ボクのような雇われ医師も含めてます)

従業員への正当な評価(金銭的、精神的)

とにもかくにも、経営側が、これをやらなくては、
このチェーンは回りません。

正当な、というのが大事で、あくまで、客観的な、
誰が見ても納得できる、能力、成果主義ということです。

〇〇はえこひいきされているとか、
自分は正当に評価されていないとかの不満が蔓延すると、
労働者の幸福度は下がるらしいですし。

給与などの金銭的報酬も、精神的報酬も大事です。

つまりは、給与アップも大事だけど、
褒められたり、
立場上の権限、裁量権が増えたりが大事だと。

確かにいくつになっても褒められたいですよね(笑)

裁量権が与えられるのも、
自分は信用されている、
任されているという自己肯定感の向上につながりますよね!(^^)!

ボクは給与を出す立場ではないので、
できるだけスタッフの働きに感謝を示せるように、
とは心がけています。

(「そうデスか~?」「全然足りないんですケド~」とかいう空耳が聞こえます)

ボクがいかにスタッフに感謝しているかは、
過去の記事『医師の働き方改革?ウチではもうとっくに完了してますけど・・・』もご参考に(^^)/

従業員ロイヤリティアップ → おもてなし精神アップ

従業員が正当に評価された給与をもらい、
褒められて自分の仕事に誇りを持てれば、
病院へのロイヤリティ(忠誠心)が上がりますよね。

自分は周りから見てもいい病院で働いている、
そこで認められていい仕事ができていると思えるのは、幸せなことですよね。

当然、離職率は低下しますし、入職希望者も増えるので、病院の成長にもつながります。

また、誇りと自信をもってできる仕事は、
自分の中に余裕もできるので、
サービス精神、おもてなし精神が自ずと生まれてきますよね。

有名ブランドホテルでは、ディズニーランドの清掃員さながらに、
従業員一人一人が商品の一部であるという自覚を持った、
自発的な行動を取るそうです。

患者満足度アップ → 患者ロイヤリティアップ → 患者数増加

みんながサービス精神を持った一貫した行動を取れば、
当然患者さんの満足度は上がります。

そして、困ったときはあの病院に行けばいい、というように、
ロイヤリティが向上し、
良い口コミも増えると。

患者さんの数も増えると。

収益アップ → 従業員への還元

病院収益が上がるのは当然ですが、ここで問題が生じます。

患者さんが増加すると、従業員の仕事量も増加し、疲弊するからです。

ここからが経営者のウデの見せ所かと。

まずは経営者が利益を自分の懐に貯めこまずに、
従業員の労をねぎらい、金銭的、精神的な、正当な報酬を与えなくてはいけません。

これでまたチェーンが振り出しに戻るワケです。

ここが組織として、成長か退化かの分かれ道かと。

ただ、当初は給与アップするのはいいですが、こなせる仕事量にも限界があります。

その分はスタッフを新しく雇い入れる必要があり、
もともとのスタッフへの報酬アップと、
新規スタッフの雇い入れと、
どんなバランスで行うか・・・

ああ、経営って難しい・・・
(シミュレーションだけで悩むなんて、中二病の一種ですな)

で結局、医療でもサービス・プロフィット・チェーンは可能なのか?

ここまでは捕らぬ狸の皮算用ですので、
うまくいくのか心配ですが、
実際に院長がサービス・プロフィット・チェーンを意識して経営を行っているクリニックもあります。

どことは言いませんが、めちゃ流行ってるらしいです( ゚Д゚)

まあ、大企業と違って、
院長自らが自分を従業員としても扱っているワケで、
自分が見本として良いサービスを提供しなければいけないので、
一本スジが通っていないと、このチェーンを回し続けるのは大変かもですが(^^;)

疲れた経営者が、
オレがメインの労働力として稼いでいるんだ!
オレがいっぱいお金もらって当然だ!
ってテンパったマインドになっちゃうと、
他のスタッフがついてこなくなりますもんね。

なんと!ここで気づきましたが、
経営者が自己犠牲の精神、
スタッフに対する献身の精神を持っていないと、
このチェーンは回らないということですな!

やっぱ経営って難しいわ・・・
(センセ~!中二病が重症化してマス)

まとめ

良い医療を提供し続けるためには、
サービス・プロフィット・チェーンの考え方が良いのではないかということについて、
思うトコロを長々と書いてしまいました。

一般企業でうまくいってるのなら、
医療者の精神論とかに終始せずにすむし、
組織運営のテクニックとして、そこそこ再現性が高いような気がします。

そういえば昔、
病院やクリニックの成長に伴って、簡単に従業員の報酬もアップする仕組みとして、
株式会社にして、従業員の持ち株比率に従って株主配当を配ればいいじゃないか!と考えたことがあります。

でも日本では、株式会社が病院やクリニック経営をしてはいけないそうなので諦めました(>_<)

兎にも角にも、働く人も、患者さんも、
どちらも幸福になれる職場を目指したいものですなっ。

『幸福な職場推進委員会準備室』代表として、最後まで読んでくださって、
ありがとうございました~!!!

(ここまで書いておいて、後ろに院長がいないかドキドキして振り返る)

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