アメリカの医師射殺事件に思う事

せぼねの話

こんにちは!
ドクターコンちゃんです!

先日、アメリカで、腰痛のオペを受けた患者が
主治医などを銃で射殺するという事件がありました。

⇒事件概要はこちら

アメリカでは銃乱射による殺傷事件が続いており、
この事件後に、これまでより銃規制が一歩進む見込みのようです。

銃社会はコワイ、
変な人が銃を持つと
いわれのない理由で殺されることもあるから銃規制せねば、
というのが一般的な感想かもしれませんが、

ボクはこの犯人が腰痛の術後という点にひっかかりました。

この報道では、犯人は腰痛の治療としてオペを受け、
その後も腰痛が続いていたことを訴えていたようです。

術後の一時的な傷の痛みであれば、
今はかなりよく効く痛み止めもあるので
一昔前に比べると、かなり抑えられるようになってきました。

しかし、もともと持っている腰痛が
オペ後も良くならない、ということだとしたら、
さもありなん、とも思います。

以前の記事でも、腰痛はオペで治らないこともあると書きました。

脊椎外科医はみんな知っていることですが、
脚の痛みやしびれがなく、
腰痛だけの症状の場合、
オペをしてもあまりよくならないことがあります。

それは腰痛の原因について、まだよく分かっていないことが多いからです。

ボクらはこれが原因だろうと特定してオペをしているつもりですが、
実は別の原因も重なっており、腰痛が取り切れないこともあるのです。

結局、現代医学では、
完全な腰痛の原因究明法はまだできておらず、
そのためオペをもってしても
100%腰痛を治せる保障はない、という事です。

これはどんなに優秀な脊椎外科医を雇えるとしても同じことで
かつてのJFケネディ大統領も
腰痛で複数回のオペを受けるも治らず
生涯苦しんだ一人です。

それでも他に治療法がなければ
患者さん側も、医師側も
藁をもすがる思いでオペに賭けることもあります。

ただし、患者さん側には、
良くならない可能性についても
理解していただく必要はあると思います。

今回の犯人は、
腰痛を治そうと思ってオペを受けたにも関わらず
あまり良くならなかった、
もしくはオペによる筋肉のダメージなどでより悪化したか、
そういうケースではないかと思うのです。

もしそうなら、
どんな理由であれ殺人を許容できるものではないにせよ、
脊椎外科医としては
腰痛を完全に治す方法をまだ見つけられていない我々の不甲斐なさに
申し訳ない気持ちにもなるのです。

今回は
もしかしたら
主治医の術前の説明や
術後のケアが不足していたのかもしれません。

または説明されていても
この犯人がオペに強すぎる期待を抱いてしまっていたか
リスクについてよく理解できていなかったのかもしれません。

双方ともうまくコミュニケーションがとれていなかったのかもしれません。

ふだんから感じている
現代医療の限界にまつわる事件なだけに
とても悲しく
身につまされる思いがします。

この犯人の術後の経過に同情はしますが、
だとしても
逆恨みによる殺人は
到底許されるわけではありません。

こういう事件があると
今後アメリカで
脊椎外科医がオペに対して少し消極的になるかもしれません。

不注意な脊椎外科医はちょっとくらい自粛した方がよいかもですが、
まともな医師までがびくびくしながら仕事をし
一般的な患者さんまでもが医療のメリットを享受する機会が失われるのは
健全ではありません。

やはり銃は規制されるべきと思います。

ボクとしては今回の事件を受けて
ただ単に
アメリカは銃社会でコワイとか、
術後の経過が悪いからと言って殺すなんてヒドイといった
犯人への批判だけにとどまらず、

他山の石として
患者さんへの説明についてや
術後鎮痛の工夫など
明日からの診療に生かしたいと思う次第です。

最後まで読んでくださって
ありがとうございました~!!!

コメント

タイトルとURLをコピーしました