オペでも治らない難治性腰痛に苦しんだジョン・F・ケネディ大統領に学ぶ ~水泳が最も効果的だった!?

せぼねの話

こんにちは!
ドクターコンちゃんです!

病気は超プライベートな事柄ですが、
著名人が整形外科・脊椎外科でオペを受けたと聞くと
どこでどんなオペをされたのか、やはり気になってしまいます。

まして腰痛は成人の半分くらいが経験すると言われる症状ですから
かなりの数の著名人が腰痛持ちなハズです。

ジョン・F・ケネディも腰痛に苦しんだ

さて、超有名なアメリカ大統領、ジョン・F・ケネディも
腰痛に苦しんだ一人です。

SPINE UNIVERSEというアメリカの脊椎疾患情報サイトに
ジョン・F・ケネディの受けたオペなどについての記事がありました。

John F. Kennedy’s Chronic Back Pain Conflicts Revealed

彼はひどい腰痛に苦しみ、普段からコルセットは手放せず、たまに松葉杖が必要だったようです。

ケネディは複数回のオペを受けたMOB(multiply operative back)であった

ジョン・F・ケネディは腰痛関連に関するオペを複数回受けたようです。

これは脊椎外科で昔からよく知られている
MOB(multiply operative back) またはFBSS(failed back surgery syndrome)
というものです。

(モブって言っても雑魚キャラ、その他大勢って意味のモブじゃないすよ(^-^;)

この原因は色々と推論されていますが、
患者さんによって病態がまちまちなため、
ハッキリとしたことは言えません。

さて、ケネディの病歴を追ってみましょう。

周囲の反対を押し切り初めのオペ(除圧術、髄核摘出術)を受ける

周囲の医師などから手術に反対されたそうですが、
腰痛があまりにひどいため、彼は1944年にオペを受けます。

術式は
腰椎椎弓切除術(L4-5 laminectomy)+後方髄核摘出術(L5-S1 discectomy)です。

椎弓切除術は主に腰部脊柱管狭窄症に対して行われる術式で、俗に言う除圧術です。
髄核摘出術は椎間板ヘルニアを取り除くためのオペです。

術後、短期間だけ症状は良くなったようですが
やはりその後はひどい腰痛に悩まされます。

実際、腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアで、
脚の痛みやしびれとともに腰痛を伴うことはありますし、
そういう方にオペをすると脚の症状と一緒に腰痛も良くなることもあります。

ただし、腰痛だけの症状の場合、
こういったオペをしても治らないことが多く、
脊椎外科あるあるの一つです。

腰痛は良くならず後方固定術を受ける

そこで彼はまた別のオペを受けます。

術式は後方固定術です。

Wilson plateと呼ばれるプレート(金属の板)を
脊椎の後ろ側の突起(棘突起)に設置して
脊椎の動きを制限すると言うものです。

最近でも似たようなインプラントはまだ使用されることもあります。

ただ、近年標準的に行われる長いスクリュー(椎弓根スクリュー)を用いた強固な固定とは違って、プレートでは固定力がやや弱くなります。

ちなみに腰痛のみの症状で固定術がされることもありますが、
データ的には必ずしも腰痛が治るわけではありませんし
正直、経験的にも、
良くなるかどうかはやってみなきゃわからないといったトコロです。

感染してインプラント抜去

さて、これで良くなったかと思いきや、
何と手術部位が感染し、このインプラントを抜くはめになります。

近年でも一定確率で術後の感染は起きますし、
インプラントを用いたオペの感染率が高くなるのはボクらにしてみれば常識です。

彼はさらに数年後、新たに脊椎の感染を来し、違うオペも必要になります。

昔は抗生剤自体も使い方も今ほど発達していなかったでしょうから、
最初の感染がくすぶっていた可能性はありますね。

当然彼の腰痛は続きます。

結局、保存的治療(手術以外の治療)が効いた?

トリガーポイント注射、運動療法で少し良くなった

その後、トリガーポイント注射(押して痛い部位に局所麻酔薬を打つ注射。近年でもクリニックでよく行われます)や、
筋力を上げるためのトレーニングプログラム(要は運動療法)を行い、それまでより症状は改善したようです。

特に運動療法、体幹筋力維持については最近でも腰痛治療に重要と言われます。

むしろ慢性腰痛に対しての治療効果について
科学的根拠が示されているのは運動療法くらいなもんです。

やっぱり慢性腰痛には、第一に運動療法を行うべきと思います。

最後はアンフェタミン頼み?

ただしカンペキには良くなっていなかったようで
アンフェタミン(覚せい剤の一種。注意欠陥多動性障害:ADHDや睡眠障害であるナルコレプシーの治療にも用いられます)の注射を度々受けていたようです。

アンフェタミンはいわゆるハイになる覚せい剤としても知られ、
気分の浮き沈みや、判断力の低下などの副作用もあります。

ジョン・F・ケネディはニクソンとのテレビ討論の前にもアンフェタミンを打ってもらっていたようです。

その注射が討論のパフォーマンスに影響を及ぼしたという意見もあるようですが、
その時のケネディは肉体的にはニクソンより健康そうに見えたそうです(^^;)

(なんか、ライブ前にコカインをキメていくアメリカのミュージシャンみたいですね(^-^;)

ちなみにケネディにアンフェタミンを打っていたDr.Max Jacobsonは
Dr.Feelgood(ドクター・いい気持ち)の異名をとっていたところ、
なかなか皮肉が効いておりますな(^_^;)

ウォーター・セラピー(水泳)で劇的に腰痛改善

その後、water therapyウォーター・セラピー。要は水泳)を取り入れ、
腰痛が劇的に改善したそうです。

ホワイトハウスにプールまで作っちゃったそうな。

さらにリハビリ・プログラムとしてウェイトリフティング、マッサージ、温熱療法も行っていました。

水泳は脊椎に体重をかけずに体幹筋のトレーニングができますし
全身の筋肉のストレッチ効果や血流改善、さらにストレス発散の効果もあり
腰痛治療に最適な運動の一つと言えるでしょう。

(ちなみにストレスは腰痛悪化のリスクになります)

コルセットをやめたら腸腰筋の張りが出た

当時の担当医はケネディに、コルセットの使用をやめていくよう指導していました。

水泳などのリハビリで良くなっていたケネディはコルセットをやめてみましたが、
今度は左の腸腰筋(股関節を屈曲する筋)の張りを感じるようになります。

他の医師に筋の張りと診断され、温熱療法、安静、伸縮性包帯の使用(体幹と太ももに巻くようです)を勧められましたが、
この新たな症状の出現で、伸縮性包帯と一緒に、
またコルセットに頼るようになってしまったそうです。

人前で長時間、背筋を伸ばしていなければいけない職業柄、
仕方がなかったのかもしれません。

コルセットと伸縮性包帯のせいでケネディ暗殺は成功した?

ケネディが銃で撃たれて暗殺されたとき、
1発目の弾を受けた時はまだ命があったようです。

ただ、1発目が命中した時に、
コルセットと伸縮性包帯でガッチガチに体幹を固められていたケネディは
体を前方に倒して身を隠すことができず
2発目の弾丸が頭に命中することになります。

あくまで後世の人間による推察ですのでホントのところは分かりませんが、
コルセットに頼らずに済む体になっていれば
一命をとりとめた可能性もあります。

まとめ

ジョン・F・ケネディという過去の有名人ですから
このように病歴も公に知られることになりましたが、
一般人の慢性腰痛患者さんの中にも同じように複数回オペを受けたりして
ずっと治らない腰痛に悩まれている方も多いと思います。

一般の方だとこういう詳細な病歴は公表されないことが多いですから
ケネディの情報はボクらとしても勉強になります。

ケネディ一人のケースが皆に当てはまるわけではありませんが、
彼に効果のあった水泳などは、慢性腰痛患者さんの治療を考える上で参考になります。

また、腰痛だけの症状に対して安易にオペはせず
まずは運動療法などの保存的治療を徹底的に行ってみるというのは大事な考え方です。

オペは他の何をやっても良くならない場合に限って行う方が、
MOB、FBSSの患者さんを減らすためには必要と思います。

これからもMOB患者さんを減らし
自分はモブにならないよう努力したいと思います!

最後まで読んでくださって、
ありがとうございました~!!!

コメント

タイトルとURLをコピーしました