空腹はダイエットになるし、オートファジーが活性化してガン予防にもなるが、オートファジーでやせるわけではないし、ガンが治るわけでもない

読書ネタ

こんにちは!
敢えて食べない喜びを噛みしめている、
マゾヒスティック・ナルシストなドクターコンちゃんです!

空腹時間を作る、間欠的断食をすることが、
健康法として流行っていますね!

ノーベル賞を受賞したことで注目されるようになりましたが、
空腹時に特に活性化する、オートファジーという細胞の働きがあります。

オートファジーは空腹時に特に働くという特徴から、
ダイエットなどと関連付けられて色々な本が出ています。

いくつか本を読んでみましたが、
やはり、というべきか、
臨床、医学研究についての一次情報を持たない非医療者の方が書かれた本の中には、
オートファジーという言葉を勘違いしておられるモノもあります。

空腹健康法とオートファジーについて正しく理解するためには、
この2冊を読めばよいかと思います。

おススメの本
  • 「空腹」こそ最強のクスリ
  • 細胞が自分を食べる オートファジーの謎

『「空腹」こそ最強のクスリ』の表紙の帯に、
『ノーベル賞を受賞したオートファジー研究から生まれた食べ方の新常識』、
『内臓脂肪』、
『ガンを克服した医師が実践する』
と書かれています。

そのせいで、オートファジーそのものがダイエット効果やがん治癒に働くかのような印象を与えてしまっているのは、
本を売るためとはいえちょっと問題あるかなと思います。

でも、中身はかなり一般の人向けに、
難しい言葉が極力省かれて分かりやすいです。

表紙帯の誤解を招くような表現についても、
「ああ、そういう事ね」とすぐ理解できます。

逆に医療者にとっては、さらっと読めてしまって物足りない印象です。

細胞が自分を食べる オートファジーの謎は、
オートファジー研究の最先端にいる研究者の本なので、
医学的知識について結構細かく書かれています。

医学研究者ではない臨床医であるボクも、
久しぶりに見る語句が多く、読むのがしんどかったです。

が、2冊を併せて読むと、ある程度ちゃんと理解できます。

2冊合わせた内容で、少し簡単に解説します。

とにかく、空腹は健康にいいという事ですが、
ごく簡単にまとめると以下のような感じです。

  • 空腹10時間でリパーゼによる脂肪分解が始まる ⇒ ダイエットになる。肥満による病気(高血圧、高脂血症、脂肪肝、心筋梗塞、脳梗塞などなど・・・)を減らせる。
  • 空腹16時間でオートファジーが活発になる ⇒ 細胞質内のゴミが掃除され、ガンやパーキンソン病、アルツハイマー病などのリスクを減らせる。
  • 空腹時間に腸を休ませることで、免疫機能が整う(病原体に対する抵抗力が高まる、アレルギーなどの自己免疫性疾患を予防するなどなど・・・)
  • 朝食を抜くと、睡眠8時間+空腹時間8時間でちょうど16時間になる(夕食から翌日の昼食までの時間)

もうちょっと詳しく解説します。

オートファジーとは

オートファジーとは細胞質内のゴミ掃除

オートファジーとは、細胞の内部にある細胞質と言う部分に溜まった老廃物(ゴミ)や、古くなって質が悪くなったミトコンドリアなどの小器官を、リソソームに送り込んで分解、再利用する機能のことです。

ゴミが溜まると、それがもとになって細胞の機能が悪くなり、ガンを含めたさまざまな病気を引き起こす基になります。

また、古くなったミトコンドリアが出す活性酸素のせいで、遺伝子が傷つけられてガンの原因になったり、神経変性によってパーキンソン病やアルツハイマー病の原因にもなり得ます。

細胞の模式図

というワケで、オートファジーの働きは、ガンや色んな病気の予防に役立つのでは、と考えられています。

オートファジーは空腹時によく働く

オートファジーとは、もともとは飢餓時に、
要らなくなったものを分解することでエネルギーを得るシステムのようです。

そのため、オートファジーは空腹時に活発化するという性質があります。

『「空腹」こそ最強のクスリ』では16時間何も食べない空腹状態でいるとオートファジーがよく働き始めるとのことです。

オートファジーによって細胞質のゴミが掃除され、細胞がリフレッシュできるため、ガンなどの病気や老化の予防ができると考えられています。

空腹で脂肪の分解は起きるが、オートファジーでやせるわけではない

『「空腹」こそ最強のクスリ』によれば、何も食べない空腹状態が10時間続くと、エネルギーを得るために、脂肪の分解が始まります。

これは脂肪細胞の模式図ですが、細胞質内に、巨大な脂肪滴という脂肪の塊が存在しています。

脂肪滴を分解するのはリパーゼという酵素が主です。

もともと小さな器官やゴミを処理するオートファジーでは、こんな大きな脂肪滴は分解できないだろうと、『細胞が自分を食べる オートファジーの謎』では解説されています。

脂肪細胞の模式図

つまり、脂肪を減らすのが目的のダイエットと、オートファジーをごっちゃにしてはいけない、という事です。

ただし、メカニズムはちょっと違うにせよ、
空腹10時間以上で脂肪が分解されるのは確かで、
さらに空腹時間を延ばして16時間以上になれば、オートファジーが働き始めます。

当然、脂肪組織を減らす、すなわちやせることでも、
いろんな病気のリスクを減らせます。

さらにオートファジーの働きが加わり、
病気のリスクを減らすことができる、というワケです。

つまるところ、空腹はやせるし、病気も予防できると。

オートファジーはガン予防にはなり得るが、ガンは治せない(むしろ悪化する)

先述のように、空腹でオートファジーが活発になると、細胞質内のゴミが掃除され、ガンの予防にもつながります。

ただし、『「空腹」こそ最強のクスリ』の表紙帯にある、
『ガンを克服した』というのは、
著者が40歳の時に舌ガンを発症し、手術で摘出したということであり、
空腹でオートファジーを活性化することでガンを克服したわけではありません

むしろガン細胞は、オートファジー機能を利用してエネルギーを得て増殖するとされています。

そのため、ガンの治療としてオートファジーを抑制する研究がされているくらいです。

つまり、空腹によるオートファジーの働きで、ガンの予防にはなりますが、
ガンになってしまった人は悪化する可能性がある、という事です。

空腹の効果

もう一度、空腹の効果について、簡単なまとめです。

  • 空腹10時間でリパーゼによる脂肪分解が始まる ⇒ ダイエットになる。肥満による病気(高血圧、高脂血症、糖尿病、脂肪肝、心筋梗塞、脳梗塞などなど・・・)を減らせる。
  • 空腹16時間でオートファジーが活発になる ⇒ 細胞質内のゴミが掃除され、ガンやパーキンソン病、アルツハイマー病などのリスクを減らせる。
  • 空腹時間に腸を休ませることで、免疫機能が整う(病原体に対する抵抗力が高まる、アレルギーなどの自己免疫性疾患を予防するなどなど・・・)
  • 朝食を抜くと、睡眠8時間+空腹時間8時間でちょうど16時間になる(夕食から翌日の昼食までの時間)

追加事項だけ説明を加えます。

空腹により腸内環境が良くなり、免疫機能が整う

腸内細菌叢などの腸の健康状態が、
免疫調整機能に重要であるということは、近年よく聞きますね。

腸は栄養や水分を吸収する以外にも、
外部からの病原体(細菌、ウイルスなど)を排除する機能も併せ持っています。

そのため、腸内環境が悪いと病原体に対する抵抗力が低くなる可能性があります。

さらに、腸内環境が悪いと、腸に入ってきた食べ物などのアレルギー物質を敵だと誤認し、
免疫細胞が攻撃することで、アレルギーなどの自己免疫疾患が引き起こされるのでは、と言われています。

つまり、街に入ってきた敵兵士だけ狙って攻撃すべきところを、
誤って一般市民まで巻き込んで攻撃している状態ですね。

よく免疫力という言い方をされますが、
攻撃力だけ高くても、精度が低いのでは自爆と一緒で自分を守れませんので、
免疫という言い方は誤解を招く言葉だと思います。

病原体への抵抗力と、
味方を間違えて攻撃しないという精度のどちらも合わせた、
エリートスナイパーのような免疫機能が整っている状態が必要です。

空腹により、腸の内部に食べ物が無い時間を作り、
腸を休ませてあげることで腸内環境が整い、
結局免疫機能にもプラスに働くよ、ということですね。

朝食を抜くと、簡単に16時間の空腹時間が確保できる

簡単に16時間の空腹時間を作るには、朝食を抜くことのようです。

夕食を前日の午後8時までに摂り、7,8時間眠り、
翌日の朝食は抜いて、12時に昼食を摂れば、
ちょうど睡眠8時間+空腹時間8時間で16時間になります。

これで脂肪分解も、オートファジー活性化もできると。

お腹が減ったら、ナッツを食べたり、
糖があまり入っていない水分を摂るのはOKとのことです。

実はボクも以前から朝食抜きを実践していますが、
慣れれば意外と苦痛なく続けられます。

どうしても朝食抜きが無理な人は、
昼食を抜いて、遅めの夕食を摂ることで、
日中に16時間の空腹時間を確保するという方法も提案されています。

ただ、空腹健康法の注意点として、
空腹によって筋肉も分解されるため、
適度に筋トレはした方が良い、ということです。

空腹は近年の予防医学の潮流

オートファジーの働きを理解するかどうかは置いといて、
空腹が健康にいいというのは、最近の予防医学の流行りのようですね。

オートファジーについての本ではないですが、
『LIFESPAN(ライフスパン) 老いなき世界』という本でも、
空腹により、SIRT-1などの長寿遺伝子が働くとされています。

この長寿遺伝子というのも、
ヒトの祖先でもある、原始の単細胞生物の頃から備わっている、
飢餓状態に耐えるためのものらしいです。

飢餓状態になると細胞増殖をストップし、
命を長引かせようとする方向へ働くそうです。

空腹時に働くオートファジーと似た機能なので、
生物の根本性質に通じるモノを感じますね。

まとめ

なんだか、リパーゼとか、オートファジーとか、難しい言葉が出てきますが、
要は空腹は体にいいというのは、世界の研究者が証明しているってことですね。

食べ過ぎは体に良くない、太りすぎは良くない、とはみんな知っていることですよね。

ダイエットは、健康にも、見た目にもいいわけですが、
特に見た目重視のダイエットは、ストレスですし長続きしませんよね。

ボクとしては、こういう本を読むことで、
健康寿命を延ばすためには、空腹時間を作るのが大事ということを理解し、
ダイエットの動機づけにできればいいと思います。

やせて見栄えをよくするため、というのは根性が要りますが、
命のためにと思えば、最も強い動機になるのではないでしょうか。

健康に長生きできて、しかもダイエット効果でカッコよくなれるなんて、最高じゃないですか!

しかも、タダですよ!?

効果が不明で高額なダイエットサプリとか、
会費制のフィットネスジムにお金をつぎ込む必要もなく、
むしろ食費が減るので、経済的にも効果があります
(病気が減るのもお金の節約になりますね^^)。

朝食を抜くだけで、健康長寿、
やせてカッコよく、しかもお金も節約できる、
現代の最高のツール、

空腹!

すぐ始めましょう!!!

というわけで、おなかが減っている中、
最後まで読んでくださって、
ありがとうございました!

(あ~、腹減った)

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