「傷はツバつけときゃ治る」の科学的根拠

論文ネタ

こんにちは!
他人の体にメスを入れるくせに、
自分の血にはめっぽう弱い、
ありがち医者のドクターコンちゃんです!

昔、転んでひざに擦り傷作ると、

「そんなもん、ツバつけときゃ治る!」

とかナントカ、
親や親せきのおじさんに言われたような気がしませんか?

子供の頃は、外だと絆創膏もないので、

実際にツバつけたりしてそのまま遊び続け、
まあ、大体治っていた気がしますが。

古臭い迷信みたいにも思えますが、
健康、治療に関しての昔ながらの知恵ってものが、
後世になって、科学的に実証されるって例もいろいろあります。

ツバでケガが治るのか?!ということについて調べたら、
ちゃんと論文がありました。

Human saliva stimulates skin and oral wound healing in vitro(ヒトの唾液は、皮膚や口のケガの治癒を刺激するという試験管内での研究結果)1)

この研究者たちは、皮膚のケガよりも、
外的な病原体にさらされ続けているはずの、
口の中の粘膜のケガが早く治るということに着目したようです。

確かに、熱々のカップラーメンとか、
熱い食べ物で口の中を火傷しても、
意外と知らないうちにすぐ治ってること多いですよね。

でもカップラーメンを皮膚にこぼして火傷すると、
ヒリヒリ痛くてなかなか治らないですよね。

まあ、粘膜と上皮っていう違いもあるとは思いますが。

さて、この研究では、
培養した皮膚と歯肉で、
開放創(ようはナイフでズバッと切れたような傷のこと)のモデルと、
凍傷による水腫れのモデルを作っています。

それと健康なヒトの唾液(滅菌済み)を合わせ、
ケガの治癒過程で見られる現象が、
唾液で刺激されるかを観察しています。

主な結果は以下の通り。

  • 唾液により、線維芽細胞の増殖が刺激されたが、角化細胞の増殖は刺激されなかった。
  • 唾液は、水腫れの再上皮化は刺激しなかった(水腫れは唾液成分が浸透できない死んだ表皮の層を含んでいるため)。
  • 唾液は、創傷治癒に関わるCCL20, IL‐6, CXCL‐8というサイトカインの分泌増進といった、炎症反応を増加する。
  • 上記のような結果から、執筆者は、
    唾液が口の中や皮膚のケガを治りやすくする力を持っている、としています。

    さらに、これを傷を治す治療法に生かせれば、
    という希望を持っているようです。

    まさか他人のツバを瓶に貯めておいて、
    ケガしたら塗ってあげるよ、ということではないと思いますが(^^;)

    ヒトか動物の唾液の成分を培養するかして、
    薬にしたいということでしょうかね。

    現代日本では、
    ケガしたらまず水道水(日本の水道水には細菌はいません)の流水で汚れを洗い流し
    消毒薬はつけない(消毒薬は、皮膚を治すのに働く正常細胞も殺します)のがキホンです。

    縫うような傷でなければ、
    傷が乾かないようにする創傷被覆材で覆っておくと早く治ります

    この研究を日常生活に生かすとすれば、
    テレビ番組の『冒険少年』みたいに無人島でサバイバル生活してて、
    水も何も周りに無いような状況で擦り傷作ったら、
    ツバを吹きかけておくのもいいかもね、
    というところですかね(非日常でしたねっ)

    親戚のおじさんの言ってたことは、
    科学的にまあまあ正しかったと。

    とゆーわけで、まとまったところで、
    最後まで読んでくださって、
    ありがとうございました!!!
    ぺっ!(ツバを吐かない)

    参考文献:
    1) Human saliva stimulates skin and oral wound healing in vitro
    Charlotte Rodrigues Neves et al.J Tissue Eng Regen Med. 2019 Jun;13(6):1079-1092

    【英語論文ネタ】「傷はツバつけときゃ治る?!」の科学的根拠

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