ドクターX 第1話 (2021/10/14放送) 勝手にまとめと検証 ~チーム医療と感染予防は大事だよ~

医者雑談

こんにちは!
整形外科以外の話題は苦手な
専門バカのドクターコンちゃんです!
(ちなみにタイトル画像は米倉涼子さんとは何の関係もございませぬ)

さて、2021/10/14より、いよいよ新シリーズが始まった
『ドクターX 外科医・大門未知子』シーズン7

(以下、ネタバレありますのでご了承を。

相変わらずの
「私、失敗しないので」
という気持ちいいセリフ、

もはや『笑っていいとも!』におけるタモリさんの
「髪切った?」
ぐらい、聞き流しフレーズになってきましたね!
(ネタが少し古いすね(^^;)

前半に出てきた
急性胆嚢炎については
よくある疾患なのですが、

後半の、若手医師が発症した疾患は
少なくとも日本では珍しいヤツですね~

ドラマを見ている最中は
アフリカ渡航歴があることから
エボラ出血熱かと思いましたが、

『ラッサ熱』(厚労省のラッサ熱情報サイト)

???

聞き慣れないですね~。

昔習ったかな?

アフリカのウイルス性出血熱の一種とのことなので
エボラに似てはいますね。

重症化率は20%、
致死率は1,2%とのことなので
エボラよりはマシなようです。

ドラマ内の若手医師は
ラッサ熱による収縮性心膜炎にて
心膜剥離術を受けます。

ラッサ熱で心膜炎は起こし得ます。

さらに心膜炎によっては、
心膜が分厚く、硬くなり、
心臓の動きを妨げてしまうという
収縮性心膜炎を起こすことがあります。

心臓の動きが悪くなると
心不全になりますので
最初の治療は利尿剤などのようです。

ただし利尿剤で病状がコントロールできなければ
命に関わるため
早期に心膜剥離術を行うこともある、
とのことです。

ドクターXで扱うネタって突拍子もないようですが、
国内で多く行われてはいないものの
実際に存在する手術手技などを参考にしているようですので
『ラッサ熱による収縮性心膜炎でオペ』という症例報告があるのか
日本語で文献検索してみました。

ありました。

『多彩な心房性不整脈が認められたラッサ熱による収縮性心膜炎術後例』
水澤 有香ら. 心臓 (0586-4488)37巻Suppl.4 Page11-17(2005.11)

この論文の症例は、
西アフリカから帰国した46歳男性が
収縮性心膜炎にて心膜剥離術を受けたとのことです。

やっぱりちゃんと参考文献あるのね。

しかし、オペ受けるほどの収縮性心膜炎をやっちゃうと、
まったく心機能が元通りになる保証はないワケで、
ドラマ中のこの若手医師が今後、
軽い心不全を患っていくことになるのか、
そんな細かい描写もあるのか
期待したいところです。

(まあ、主人公も、相棒の麻酔科医も
過去に大病でオペ受けるエピソードありますが、
その後あまりにピンピンし過ぎており
そこらへんはやはりドラマだからでしょうけどね・・・)

ところで、
この心膜剥離術を主人公はたった独りで行います。

心臓のオペを!?

麻酔科もなしで!?

器械出しナースもなしで!?

正直、経験ありますが、
自分で麻酔かけて
バイタルサインに気を使いながら
オペも行うのは、
完全にはオペに集中できません。

しかも必要な器械をすぐ出してくれる
ナースもいないなんて、
明らかにオペスピードが落ちますね・・・

実際にドラマ中でも
一旦薬で心臓の動きを止めて
数分で出血点を止めるという芸当を披露していますが、
麻酔科もナースのサポートもなしなんて、
ちょっとあり得ない話ですね(^-^;
(ブラックジャックを彷彿とさせます)

スピードが必要なオペなら
なおさらチームでやるべきだろと。

実際の現場なら
「ちょっとナニ言ってるか分からない」(by サンドウィッチマン)
ってツッコミ入りそうです(^^;)

まあ、あり得ないからこその
娯楽フィクション・ドラマですが。

さらにさらに
術中に素手でラッサ熱患者さんの血液のついた
心臓を触るシーン・・・

やっぱり、
「ちょっとナニ言ってるか分からない」
ってツッコミ入りそうです(^^;)

ドラマ的に、
自分の命も顧みず、ってのは
カッコいいのは分かります。

ただ、自分を含めて、
こういう重症感染症患者を分かって増やす行為、
感染症を広める行為というのは、
ホントは医者としてあるまじき行為です。

新型コロナにしても同様ですが
感染症では、まず医療を行う人間を守って
広げないのが大原則だからです。

だって自分から
さらに多数の人に広がるから。

予防ができないなら、
医療行為をやらないほうがましになってしまいます。

このドラマでは兎角、
患者第一の主人公と
保身しか考えない医師たちの
対立構造が押し出されていて、
ややもすると
医療現場では無難な、全体のことを考える意見が
間違ったものであるかのような印象を
一般の人に与えかねないのは、ちょっと怖いです。

実際の現場では、
今回の主人公の行為は美談ではなく、
暴走医の失態と批判されるでしょうね(^-^;

オペがうまくいったから良かったものの
現実はそううまくいきません。

不測の事態の恐怖は
ベテラン外科医ならみんな知っています。
(当事者は少なからずパニックになるので
そのためにも冷静に眺められる人が
周囲に必要です)

結局、チーム医療で、
しっかり感染予防策を取って、
できるだけ不測の事態への備えを作った上で臨む方が
患者さん個人にも
社会全体としても有益だという
反面教師的な回だったなと。

(意図せず批判的になってしまいました・・・)

じゃあ見なきゃいいじゃんってことですが
ドラマ自体は痛快で好きですよっ。

どうしても現実との乖離に
ツッコミどころ満載だといつも思ってしまいますが、
まあ、あくまで娯楽ドラマとして、
目くじら立てずに素直に楽しむ方がいいですねっ。

『半沢直樹』みたいなもんとして。
(半沢直樹やってる間、銀行員の方は、
今のボクみたいな気持ちだったのかな(´・ω・`))

というワケで、最後まで読んでくださって、
ありがとうございました~!!!

参考文献:

・『多彩な心房性不整脈が認められたラッサ熱による収縮性心膜炎術後例』
水澤 有香ら. 心臓 (0586-4488)37巻Suppl.4 Page11-17(2005.11)

・Lassa fever diagnostics: past, present, and future.
Happi AN, et al. 2019 Aug;37:132-138. doi: 10.1016/j.coviro.2019.08.002. Epub 2019 Sep 11.

厚生労働省 ラッサ熱の情報サイト

Wikipedia ラッサ熱のページ

・社会福祉法人恩賜財団済生会ホームページ内 収縮性心膜炎の説明ページ

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