DIE WITH ZERO ~日本で実践する際の注意点

読書ネタ

なんか最近、人生観や死生観に関わる本が大好きな自分に、
自身のトシを意識している証拠だと気づく今日この頃のドクターコンちゃんです!

と、いうワケで、最近すごい気に入った本の紹介です。

その名も『DIE WITH ZERO』。

日本語にすると、『ゼロで死ね』。

医師の端くれとしては、題名に大きく『死』と言う字を書くことをためらい、英語だけにしました(^-^;

お金に関する本としては珍しく、
資産の殖やし方ではなく、
正しい資産の減らし方、ともいうべき本です。

本の内容を簡単に紹介すると、
お金を死ぬまで貯めこまず、
自分の死亡予測年齢から逆算して、
体の動く若いうちから、思い出作りのためにお金を使っていこう!
ということです。

昔からよく言いますよね。

「お金は墓場まで持って行けない」

って。

もう少し自分なりにまとめて説明します。

人生で一番大切なのは思い出作り

この本では、人生で最も良いお金・時間の使い方は、
思い出作りだ、としています。

お金の良い使い方として、モノを買う事などにはほぼ触れていません。

著者が言うには、若いうちに作った経験、思い出は、
その後の人生でずっと、思い出すことで配当を得られる、とのことです。

確かに、モノは買ってしばらくはいい気分ですが、
その気持ちは長続きしませんよね。

結局すぐ飽きて、また違うモノが欲しくなります。

そもそも見栄を張るためだけの買い物なら、
エンドレスに続く、他人とのマウント取り合い地獄ですよね(^-^;

その代わり、一度でもした良い経験は、思い出すたびに幸せなキモチを呼び起こすことができます。

ボクも昔、新婚旅行で行った南国リゾートの思い出を頭に浮かべると、
もう一度追体験して、いい気分に浸れます(^^♪

幸せな気分を買うという意味では、
モノを買うより、家族や仲間との時間や、旅行など、思い出作りのために費やしたお金の方が、
将来にわたって遥かに大きなリターンを及ぼす、という事ですね。

使いきれない老後資金を作るために、若い時の時間を費やしすぎるな

さて、上記のように、人生を豊かにするためには、
思い出作りにお金を使うのが一番大事、というのを前提にすると、
老後のための貯えも全部、若いうちに浪費してよいのか、という反論が出てきます。

著者はこの点に関して、すべてのお金を浪費してよいと言っているわけではないです。

もちろん、働かなくなってからの、老後の備えも大切と述べています。

ただし、(アメリカの話ですが)実際には、多くの人が、
貯めこんだ老後資金の大部分に手を付けずに亡くなっているとのことです。

なぜなら、年齢とともに使うお金が減っていくため、
世間で言われている以上に、老後に必要なお金は少なく済むから、ということです。

そして、その老後資金をどうやって作ったかと言えば、
若い時代に、自分の思い出作りの時間を削って、働いて稼いだものなのです。

つまりほとんどの人は、健康で何でも経験できる若いうちの貴重な時間を、
最期まで使わない資金を稼ぐために使ってしまっている、ということです。

老後資金を必要以上に貯めこまず、ある段階で思い出作りのために取り崩していく、
そういうバランスが大事だと。

そのためには、人生の早いうちから自分の寿命を意識して、
老後必要な資金を具体的に計算することが必要だという事です。

時間的制約 ~いつまでも子供用プールで遊べると思うな

仕事ばかりで、幼い我が子との触れ合いの時期を逃してしまうといった、時間的制約についても言及しています。

子供との経験は、その時期時期で得られる事柄が変わっていきます。

3歳に時には3歳の時の、
10歳の時には10歳の時の、
それぞれに一緒に経験できる内容が変わってしまいます。

しかも、そのタイミングを一度逃したら、その後の長い人生で、二度とやり直せません。

その後の人生を豊かにするために必要な、思い出作りの機会を失うという事です。

下に述べる健康面も含めて、
思い出作りには、賞味期限があるということです。

経験したいことを、先延ばしにはできないこともあるのです。

だから、やりたいことは今すぐやらなければいけない、と著者は言います。

健康的制約 ~年を取るごとに経験できることも減っていく

先にも書きましたが、健康面の衰えも考慮しなければなりません。

年齢を重ねるにしたがって、新しく経験できることが減っていきます。

70代、80代になってから水上スキーなど、
筋力、体力が必要な危険なスポーツにチャレンジできるでしょうか。

旅行するにも、体力が必要です。

年を取るほど、健康面でやれることに制限が増えてしまいます。

やはり思い出作りには賞味期限があるということになります。

だから、若く、体力があるうちにしかできない経験は、
お金を使って早く経験しよう、というワケです。

もちろん、健康寿命を長くし、年をとってもやれることを多く維持するため、
若いうちから運動習慣などで身体に投資することも大事です。

タイムバケットを使おう

著者は、『タイムバケット』という考えを提唱します。

自分の残りの人生を、5歳ごと、または10歳ごとに区分けし、
その年代でやりたいこと(その年代でなければできないこと)を書き出す、というものです。

以前から、『バケットリスト』と言って、
死ぬまでにやりたいことを羅列するというアイデアはあります。

ただしこれだと、そのうちいつかやりたいと思うだけで、
思い出作りの賞味期限がハッキリしません。

タイムバケットに入れた、やりたいことリストのために必要な金額を書き出し、
その他必要な生活費を残りの寿命から算出すれば、
いつから資金を取り崩せばよいかが分かることになります。

子供への相続や寄付は、生きているうちに早くやろう

著者が、この本のような内容を人に話すと、決まって、

「お金を全部自分のために使ってしまって、子供に金を遺さないのか」

という反論が出るそうです。

これに対して著者は、どうせ死んでから使いきれなかったお金を子供に渡すなら、
子供がお金の価値を十分引き出せる若い時に渡せばよい、と言います。

というのも、遺産相続を受ける子供の年齢は、
すでに高齢に入っていることが多いからだそうです。

先述のように、若いうちの方が、お金を使って思い出作りをしやすいです。

アンケートでは、子供側からすると、相続を受けたい自分の年齢は、
25~36歳が多かったとのことです。

確かに、その年代は子育てや、住居費など、何かとお金が要りようですよね。

つまり、どうせ遺産を残す予定なら、その分を生前に子供に渡した上で、
あとは自分の思い出作りにお金を使ったらいい、という事です。

また、絶対に使いきれないような莫大な資産を築いた人が、
自分が死んだら寄付をしたいと言う事も多いようですが、
それに対して著者は、
それなら今すぐ寄付すべきだ、と言います。

なぜなら、寄付を求めている人たちは、今、助けを求めているからです。

何歳まで生きるか分からない問題

早く資産を取り崩す方が、良い思い出をたくさん作れるため、
人生が豊かになるのは分かりました。

ただ、何歳まで生きるのかを知ることができないため、
老後の資金枯渇を恐れて、みんななかなか資産を使えないですよね。

これが先進国で最近言われる、『長生きリスク』です。

人間の最長寿命は、120歳くらいだと言われています。

自分が120歳まで生きると仮定して老後資金を用意できればよいのですが、
それだと相当莫大なお金が必要な計算になるでしょう。

『早く亡くなるリスク』に対しての金銭的備えは、『掛け捨て生命保険』の一択です。

では、『長生きリスク』に対してよい保険があるのかというと、
アメリカには『長寿年金』という金融商品があるそうです。

例えば、引退時に50万ドル(大金ですが!)でこの商品を買うと、
それから天命を全うするまで毎月2400ドルが支払われる、というものです。

早い段階で亡くなるとお金はあまり帰ってこないので損をしますが、
それは、亡くならなければお金が返ってこない掛け捨て生命保険と同様です。

ただし、120歳まで長生きしても資金枯渇の心配をせずに暮らせます。

確立は低いけど、もし起きたら生活に困るリスクに備えるという点で、
掛け捨て生命保険と同じような性質なので、理にかなっています。

日本にも似たようなものがありますが、長期積み立て型である点がイマイチです。

長期の資産運用なら、手数料を取る保険会社に任せるより、
自分でやったほうが圧倒的に利回りが良くなるからです。

世界一の長寿国である日本の保険会社も、
良い長寿年金(というか長寿保険)をどんどん出すべきだと思います。

日本での注意点 ~資産を築ける投資知識があることが前提

アメリカでは、お金は資産運用で殖やすのが当たり前

ゼロで死ぬことを目指すことの効率の良さについては、非常に腑に落ちましたが、
ちょっと気になったこともあります。

それは、前提として、あくまで老後資金を十分築ける必要がある、という点です。

著者は、金融業界でかなり稼いだ人ですから、
一応老後資金になんの不安もないワケです。

あと、アメリカでは現金、預貯金で蓄えるのではなく、
余剰資金は投資で殖やすのが常識です。

文中には、「資金は使わずに株や債券に回せば、年利数%で殖える」とか、
「住宅を買えば、将来は値上がりしている」と書いてあります。

アメリカでは、株、債券、不動産(個人用住居含め)に投資しておけば、
確実に資産は増えていく、というのが前提なのです。

その前提条件があればこそ、
今、思い出作りにこのお金を使うか、
将来のために資産運用で殖やしておくか、
という選択肢が出てきます。

日本人にはまず、資産運用で殖やす金融リテラシーが必要

現代日本では、老後資金が2000万円不足するかもなど、困った話題もありました。

ここ20年くらい、日本の給与水準は上がっていません。

終身雇用と、多額の退職金、十分な国民年金といったものは、もはや過去の産物です。

以前のように、何も考えずに仕事だけしていたら、
DIE WITH ZERO(資産ゼロで死ぬ)を目指すどころか、
DIE BY ZERO(資産ゼロによって死ぬ)ということになりかねません(´・ω・`)

日本ではバブル崩壊後、確実に値上がりする不動産物件は非常に少なく、持ち家のほとんどに資産価値はありませんし、
株価はバブル崩壊前の水準には全く戻ってもいません。

まずは日本人は、銀行や証券会社、保険会社のいう事を鵜呑みにせず、
比較的安全確実に資産を増やせる金融リテラシーをつけないと、
思い出作りのために使う資金を持てないので、
この本の内容も無駄になってしまうかな、と思います。

まとめ

なんだか最後はしょんぼりシビアな話になってしまいましたが、
今後のお金の使い方を選択する上で、ためになる考え方が学べる本だと思います。

まずは金融リテラシーをつけて、老後資金を確保する必要があります。

でもお金を殖やすことばっかり考えてもダメで、
自分の寿命をある程度意識し、
その上で、手元のお金を資産運用もしくは思い出作りのどちらに今使うのが最適かを、
人生のステージごとに選択していく考え方こそが、
人生を豊かにするコツなのだと思います。

というワケで、最後まで読んでくださって、
死ぬほどありがとうございましたー!
(やはり医師が言うと不謹慎感がぬぐえない(´・ω・`)

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