こんにちはー!
自身もパソコン作業による首コリに苛まれながら
ブログを書いているドクターコンちゃんです!
今日は、交通事故の外傷でよくある首の痛みなどの症状、
いわゆる『ムチ打ち』と言われる状態になると、将来首が悪くなるのか!?
ということについて、新しい論文が出ていたので説明します!
しばらくムチ打ちについての一般論が続くので、
早く本題に行きたい人は、
4.ムチ打ちになると将来首が悪くなる!?まで飛ばしてください。
ムチ打ちで長期間、首、肩の痛みで困られる方がいます。
この症状は時間とともに良くなりますが、
事故のせいで将来、首が悪くなりやすいということはあるのでしょうか?
最新論文で調べてみましょう!
ムチ打ちについて
まず、ムチ打ちについてですが、
我々医師は通常そういう病名はつけません。
ムチ打ちという言葉は、
追突事故で、首がムチを打つ時のようなしなりを伴った動きを表しているに過ぎず、
医学的にどこが外傷を受けたのかを表した言葉ではないからです。
我々医師が付ける病名は、
頸椎捻挫や頚部挫傷、外傷性頚肩腕症候群といったものが多いと思います。
ムチ打ちの症状とその原因
ムチ打ちの症状は非常に多彩で、
首の痛みや肩こり、腕の痛み・痺れ、頭痛やめまいが出ることもあります。
問題は、レントゲンやMRIを撮影しても、
客観的にどの組織が損傷しているのかを見つけることができないことです。
すくなくとも骨折などの骨の損傷は見当たらず、
筋肉の大きなダメージも検査では見つけられず、
おそらく骨の周囲の筋肉、靭帯など柔らかい組織(軟部組織)の広い範囲でのダメージではないかと思われます。
ムチ打ちの治療
骨折などではないため、
手術など特殊な治療の対象にはなりません。
痛みを和らげてあげる治療が主で、
鎮痛剤、物理療法(温熱療法、電気治療、頸椎けん引など)、
ひどくなるとペインクリニックでのブロック注射療法など行われることもあります。
そうやって痛みを抑えてあげているうちに、
損傷された組織を体が治してくれるのを待つという考え方です。
症状が消えるまでに時間がかかる方もおられます。
ちなみに、頸椎カラーについては、
長期間装着していると余計首の痛みが慢性化するので、
受傷から数日以内にしてくださいねっ。
ムチ打ちになると、将来首が悪くなる!?
さて、今回の本題です!
ムチ打ち以外で、
首の痛み、肩コリ、腕の痛みやしびれを訴えて受診される方は非常に多いです。
これらは頚椎症といって、首の老化に伴うものがほとんどで、
レントゲンやMRIで、椎間板の老化(椎間板変性とも言う)がよく見られます。
そういう患者さんから、
昔、事故でムチ打ちをやったけど、そのせい?
という質問をよく受けます。
さて、実際に過去のムチ打ちのせいで首が悪くなったのでしょうか!?
(頚椎症についての説明は以下の動画もどうぞ ⇓)
ムチ打ちに関する最新論文
そんな折、最近の英語論文で、以下のものを見つけました。
患者の症状と、関連するMRI上の退行性変化における、ムチ打ち外傷による長期間の影響
(The Long-term Impact of Whiplash Injuries on Patient Symptoms and the Associated Degenerative Changes Detected Using MRI
A Prospective 20-year Follow-up Study Comparing Patients with Whiplash-associated
Disorders with Asymptomatic Subjects)
なんか、日本語にすると余計分かりにくいですね(笑)。
要は、ムチ打ち症になった人たちと、ムチ打ち症でない人たちとで比較した時に、
20年後に首の症状や、MRIでの椎間板老化に違いが出るのか?ということです。
さて要点は以下になります。
- ムチ打ちになった人は、そうでない人に比べて、
20年後に肩コリ(または肩のハリ)や頭痛、腕の痛みが出やすい。 - MRIでの椎間板の変化はムチ打ちの人で出やすいわけではない
(過去にムチ打ちがあってもなくても老化によって同じように起きる)。 - MRIでの椎間板の変化は、症状と関連がなかった。
ムチ打ち歴があると、将来症状は出やすいが、
MRI上の老化変化は出やすいわけではない・・・。
なんだかモヤモヤしますね。
結局、ムチ打ち受傷時にMRIで何の変化も見いだせないのと同じで、
将来にもMRI上は特別悪くなるわけではないと。
MRI上は過去のムチ打ちの証拠は見いだせないということですよね・・・。
でも、痛みなどは出やすいわけですよね。
つまり、前述の外来患者さんへの説明としては、
過去のムチ打ちのせいで、今の痛みが出やすくなった可能性はあります。
でもMRIでは、ムチ打ちを経験していない人と比べて悪いわけではありません。
でしょうか。うーん・・・モヤッとする・・・。
とにかく、ムチ打ちを経験すると、
将来も首からの症状が出やすいということなので、
やっぱり事故に遭わないのが一番ですねっ
(当たり前か)
思うに、人間が自動車を運転している以上、絶対に事故はなくなりません。
最近の車に装備されているブレーキアシストシステムは
多少追突事故を減らしてくれていると思いますが、
スピードが出ているとアシストも間に合わないようですしね。
一度ムチ打ちになると、
長らく症状に苦しむ人達が少なくないことを見てきた整形外科医の立場からは、
早く自動運転を実用化してくれ
と切に願いますね。
人間が運転しなくなれば、ほとんど交通事故はなくなるでしょう。
そうすると今度は自動車保険そのものが不要になるでしょうし、
自動車を運転する仕事というのがほとんどなくなるわけですから、
急激に自動運転化が進むとたくさんの人が職を失うことになるので、社会上の問題も生じますが・・・。
それでも、医師としては、
現在でもムチ打ち症の明らかな原因を見つけることもできず、
そのため確実な治療法も存在しないわけですから、
ムチ打ち症の検査や治療の研究が進むことは期待薄なので、
ムチ打ちそのものをなくす、すなわち事故をなくすことこそが解決策と思うわけです。
みなさん、将来の症状発生のリスクを減らすには、
ムチ打ち症に遭わないことのが一番なので、
運転中は後方の車の動向にも気を配り、
くれぐれも安全運転に気を付けてくださいねっ。
最後はありきたりな結論になってしまいましたが、
最後まで読んでくださって、
本当にありがとうございました!
参考文献
1)The Long-term Impact of Whiplash Injuries on Patient Symptoms and the Associated Degenerative Changes Detected Using MRI: A Prospective 20-year Follow-up Study Comparing Patients with Whiplash-associated Disorders with Asymptomatic Subjects.
Watanabe K, et al. Spine (Phila Pa 1976). 2021
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